心房細動(前篇)
循環器内科 野崎 彰
(緑のひろば 2009年11月号掲載)
心房細動とはどのような病気なのでしょう?
不整脈の一種です。不整脈の中では、期外収縮という時々脈が飛ぶ不整脈とともに多くみられます。心房細動になると、心房が毎分350〜600回の頻度で不規則に興奮します。しかし、心房と心室の間に房室結節というバリアの役割を果たす部位があるので、心房の早い興奮がそのまま心室に伝わるわけではありません。それでも、普通の人に比べれば脈は速くなります。また、心房細動の脈は全く規則性がないのが特徴です。
心房細動の発症は加齢とともに多くなります。どういうわけか、男性の方が女性よりも心房細動になりやすいようです。
心房細動自体はそれが原因で心臓が止まるような危険な不整脈ではありません。しかし、長く続くと心不全を誘発することがあります。また、心房細動が原因で脳梗塞を起こすことがあります。心房細動と脳梗塞は次回にお話しします。
心房細動の原因は?
僧帽弁弁膜症、虚血性心疾患(狭心症と心筋梗塞)、心筋症などの心疾患や高血圧症があります。循環器疾患以外では、甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが多く出される病気で、そのひとつにバセドウ病があります)、慢性肺疾患、アルコール依存症などがあります。心臓超音波検査や血液検査を行って原因を調べますが、約3割は明らかな基礎疾患のないもので、孤立性心房細動と呼ばれます。
生活習慣では、アルコール、カフェイン過剰摂取、喫煙、睡眠不足などで心房細動が引き起こされることがあります。
心房細動の症状は?
動悸、胸の不快感、胸痛などがありますが、中には全く自覚症状のないものもあります。心不全になると、息切れ、呼吸困難、むくみなどが出ます。脈が速くなったり遅くなったりする心房細動(徐脈頻脈症候群)では、めまいや失神を生じることがあります。
どのような種類があるのでしょう?
普段は正常の脈ですが、時々心房細動が起こる発作性心房細動と、心房細動がずっと続く慢性心房細動があります。専門的には発作性、持続性、永続性という分類が用いられますが、ここでは話を分かりやすくするために、発作性と慢性に分類します。
治療法は?
発作性心房細動では、発作時に薬を用いて正常の脈に戻す治療を行います。薬で止まらない場合は電気ショックを行うこともあります。頻繁に発作が起こる場合は、予防的に薬を内服してもらいます。飲酒など誘因が明らかな場合は、誘因を避けるようにします。
慢性心房細動は、心房細動に固定したまま、脈が速くならないようにジギタリスという薬を中心にした内服を行います。ジギタリス内服中に食欲がなくなった場合はジギタリス中毒の可能性がありますので、病院に相談してください。
この他に、心房細動の発生源を高周波で焼くカテーテル・アブレーションという治療法も最近行われてきています。