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病気のはなし

尿失禁①~切迫性尿失禁扁~

2021年8月

部長 大矢 和宏

前回(2018年10月号)はおしっこが出にくいお話でしたが、今回はおしっこが漏れる、尿失禁のお話です。尿が詰まるのはかなり苦しいですが、おしっこが漏れるとやはりかなり憂鬱になってしまい、外出するのも嫌になったり、積極的な社会生活の妨げになってしまいます。尿失禁には溢流性尿失禁(尿が出たいのに漏れる。)、機能性尿失禁(運動機能の低下や認知症等)など分類もありますが、大まかに二つのタイプが存在します。一つ目は今はやりの過活動膀胱などにみられる、我慢出来なくてトイレに間に合わないタイプ「切迫性尿失禁」と、笑ったり、走ったりしてお腹に力が入った時に漏れてしまうタイプ「腹圧性尿失禁」があります。中には両者が混ざっている場合「混合性尿失禁」もあります。今回はその中でもトイレに間に合わないタイプ「切迫性尿失禁」についてお話しようと思います。この状態は過活動膀胱に伴う場合(多くは原因不明です。)、脳梗塞、脊椎(背骨)などの病気に伴う神経因性膀胱の症状の一つである事もあります。このようなことから男性にも女性にも起きうる病態です。

診断

いわゆるQOL疾患ですので、まずは自覚症状が重要です。どの程度おしっこが漏れて、どの程度困っているのかがポイントです。極端な話をすると尿が詰まると腎不全につながる事がありますが、漏れていても生命にかかわる事はありません。パッドテストと言う漏れる量を調べる検査もありますが、これは立ち上がったり、駆け足したり(腹圧性)、はたまた、冷水で手を洗ったり、小川の音を聞いたり(切迫性)、切迫性・腹圧性両方の要素を含んだ検査になりますので、今はあまり行われません。さらに膀胱炎等との区別のために検尿、溢流性尿失禁との区別のため、超音波検査、残尿測定等も必須です。これらの検査は通常の泌尿器科外来で行われます。

治療

腹圧性尿失禁用の尿失禁体操・骨盤低筋訓練や、少しの尿意なら我慢する膀胱訓練も有用ですが、基本的にはお薬の内服が中心となります。膀胱の筋肉の力を和らげる抗コリン剤は今は花盛りで種々販売されております。ただし、緑内障の人には使いにくかったり、尿が詰まって、苦しむ人もいます。また、認知症を進めてしまうという研究もあります。更に最近は膀胱の粘膜の感覚を和らげるβ3作動剤も出てきております。この薬の特徴は膀胱の筋肉の力はあまり和らげないので尿が出なくなることは少ないです。脈拍が少し増える事はありますが、自覚するほどではありません。ただ、効果の強さは抗コリン剤に譲るところがあります。これらの薬で多くの方は症状の改善を望めますが、もしこれで改善がみられなかったり、不充分であった場合は膀胱機能検査を経て、膀胱壁内ボトックス注入術にて症状の改善を望めるかを検討します。ボトックスはボツリヌス菌が出す神経毒(飯寿司、辛子蓮根の食中毒の時の神経毒です。)そんなのを膀胱に注射するなんて怖いと思われるかもしれませんが、ご婦人たちが小皺伸ばしのために高い費用を支払って、目尻に注射しているのと同じ薬です。決して強い薬ではありません。呼吸が止まるほど大量には使用しませんし。このボトックス治療が切迫性尿失禁に有用であることは20年以上前から知られており、諸外国では既に日常的に行われている治療であります。本邦では2020年4月にやっと承認されました。当院は、このボトックス膀胱壁内注入術を関東地区では最も多く行っている施設の一つになっています。事前にきちんと検査して改善するかをキチンと検討していれば、有効率はかなり高いものとなります。

次回は尿失禁のもう一つのタイプ、腹圧性尿失禁についてお話したいと思っておりますが、こちらも当院ならでは治療法を紹介させて頂きたいと思っております。

詳しくはこちらの診療科にて

泌尿器科

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