もうすぐ保険診療でできる スギ花粉症の舌下免疫療法
皮膚科部長 鑑 慎司
(緑のひろば 2014年6月号掲載)
春の花粉症も終わりを迎えた頃ですが、花粉症の皆様はどのような対策をしていらっしゃいますでしょうか。主な対策としてめがね、マスク、加湿器あるいは薬物療法などがあります。薬物療法ならば市販薬を購入したり、耳鼻咽喉科、アレルギー科、眼科あるいは小児科などを受診したりする方もいらっしゃることでしょう。実は当科でも花粉症の治療薬を処方しております。
スギ花粉はもともと人間にとって有害ではありません。ところがスギ花粉症患者さんの場合は口や鼻の粘膜にスギ花粉がつくと、免疫系が排除すべき外敵と認識します。外敵を排除するための反応がくしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼の痒みなどの症状です。このような反応が強い患者さんでは、血液中のスギに対するIgE抗体が増えています。
花粉症の従来の薬物療法は内服薬、点眼薬、点鼻薬などがあります。これらはくしゃみ、鼻水、鼻づまり、眼の痒みなどを抑えるための対症療法でした。ところがもうすぐ保険診療でできる、スギ花粉症の舌下免疫療法ならば完治することもあります。国内の研究報告によると、スギ花粉症に対する免疫療法によって症状がなくなったり、軽症になり薬を飲む期間や量を減らせたりした患者さんが約80%でした。
免疫療法はスギ花粉症患者さんの免疫に働きかけ、花粉に対するアレルギー反応が起こらないようにします。スギ花粉アレルギーのもとになるものを患者さんに与え続けて、スギ花粉は排除すべき外敵でないと認識させます。ただしこれには時間がかかります。
スギ花粉症の舌下免疫療法はスギ花粉症が始まる3ヶ月以上前から治療を始めます。まず問診や検査で、症状の原因が主にスギ花粉であることを確認します。原因がスギ花粉でない患者さんにはこの治療はできません。また、重症の気管支喘息、悪性腫瘍、あるいは全身の免疫の疾患がある患者さん、11歳未満や治療開始前に妊娠している患者さんなどもこの治療を受けられません。
毎日スギ花粉エキスを舌の下に垂らして、2分間保持してから飲み込みます。初めの2週間は服用量を徐々に増やします。それ以降は同じ量を服用します。服用後5分間はうがい及び飲食を控えます。さらに、服用前後約2時間は、激しい運動、アルコール摂取、入浴などを避けます。これらを2年以上毎日続けます。口の中が腫れてかゆくなるなどの副作用が時々起こります。服用後30分、投与開始初期、スギ花粉飛散時期は副作用が出やすいので要注意です。アナフィラキシーショックなど重症な副作用はごくまれですが、当院ではそのような副作用にも対応できます。
免疫療法には即効性はなく、効果が出るまで数ヶ月以上かかることが多く、そのため治療を中断する患者さんが多いです。その一方で継続することによって効き目が増します。1年目で全く効果がなくても、2年目に大幅に効果が現れる患者さんもいます。これまでの対策では花粉症がつらい方やスギ花粉症の舌下免疫療法についてご興味のある方は、ご相談ください。(当科では現在はスギ花粉症の舌下免疫療法を実施しておりませんが、実施開始時は当院のウェブサイトなどでお知らせいたします。)
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皮膚科外来
03-3429-1171(代表)
※「スギ花粉症の舌下免疫療法」の診察日は月・火・水・金の午前中になります。