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病気のはなし

「乳房再建」のはなし

2016年8月

部長 増子 貴宣

乳癌の発症率は増加傾向にあり、現在は14人に1人の割合で発症するとされています。女性の癌としては罹患率が最も高く、30歳代から増加を始め約50歳でピークを迎えます。治療は放射線療法や化学療法も行われますが、原則は外科治療です。乳房切除術や広範囲切除を選択せざるを得なかった場合の、不安感や喪失感といった精神的ダメージは女性にとって大変大きいものと思います。そのような精神的苦痛を和らげるために、失われた乳房の形態を手術によって出来るだけ元の形に復元することを、乳房再建と言います。

乳房再建の方法

1) 人工乳房(シリコンインプラント)による再建

シリコン製の人工乳房による再建で、2013年から健康保険が適応となりました。乳癌手術時にエキスパンダー(組織拡張器;風船のようなもの)を胸筋下に留置し、徐々に生理食塩水を注入して皮膚を乳房の形に膨らませた後、約半年後にシリコンインプラントに入れ替えます。手術時間が短い、身体への負担が軽い、入院期間が短いなどの利点がありますが、人工物であるため、わずかながら破損や変形の可能性もあり、その場合は再度インプラントを入れ替えることになります。

2) 自家組織による再建

患者さん自身の組織(皮膚・皮下脂肪・筋肉など)を胸部に移植して乳房を再建する方法です。①腹部の組織を利用する腹直筋皮弁術、②背中の組織を利用する広背筋皮弁術が代表的で、他に臀部や大腿部の組織を利用することもあります。利点は自分の組織のため質感が優れており、違和感が少ないことです。欠点は、組織を採取する場所にも傷跡ができること、大きい手術のため2~3週間の入院が必要なことです。なお、インプラントと同じようにエキスパンダーを使えば、胸部の傷跡を小さくすることができます。

3) 脂肪移植による再建

今後保険適応になることがほぼ確実視されている方法で、諸外国では積極的に行われており、本邦においてもしばしば行われます。腹部や大腿から脂肪を吸引し、胸部に注入する方法ですが、一度に生着できる脂肪の量は少ないため、ボリュームや乳房の形を整える目的で補助的に使うことが多いです。

以上は、マウンドと呼ばれる乳房の盛り上がりを作る方法です。その後にご希望に応じて乳頭乳輪の再建を行います。乳頭を再建するための手術を行い、その後に乳房アートメイクで色を入れますが、どちらも局所麻酔・日帰りの処置にて可能です。

乳房の欠損は整容的な問題なので、乳房再建を行うかどうかは最終的には患者さん自身で決めて頂くことになります。乳房切除による喪失感や精神的苦痛から解放されたり、身体的にも左右のバランスが取れることで日常生活の不都合が解消されるなどのメリットもありますが、治療に伴う種々の負担があることも確かです。乳房再建を行うか、どのような方法を選択するかは医師と十分に相談した上で決めて頂くことが必要です。乳房再建にご興味のある方は、是非一度形成外科に相談にお越しください。

詳しくはこちらの診療科にて

形成外科

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