病気のはなし
変形性膝関節症
変形性膝関節症とは
「変形性関節症は関節軟骨だけでなく、軟骨下骨組織や靱帯、関節包、滑膜、関節周囲筋を含めた関節全体に影響を及ぼすもので、臨床的には関節痛、圧痛、可動域制限、軋轢音や関節水症、全身症状を伴わない局所の炎症を呈する疾患」とされています。
勘違いされがちですが「関節軟骨の擦り減り」が“変形性関節症”ではありません。変形性関節症は『関節軟骨の擦り減りに伴った様々な症状を呈する疾患』と言えます。
どんな人が変形性膝関節症になりやすいのか
リスクファクターとして、肥満(過体重)、女性、高齢、膝関節外傷後、膝に負担をかける職業(農業、林業、漁業、建設業など)などは変形性膝関節症になりやすい要因といわれています。またメタボリックシンドロームの病態とされている肥満症、高血圧症、脂質異常症、糖代謝異常症なども関連が指摘されています。
変形性膝関節症の症状とは
初期の症状は運動開始時にのみ痛みが出現するものの、動きだすと痛みが軽快することが多い傾向にあります。しかし、病期の進行とともに、運動時痛の増大、関節内轢音、関節水腫、関節可動域制限などを生じ、末期には歩行障害や膝の外観上の変化も著明となり、多くは内反変形膝、いわゆるO脚変形を来します。
診断について
立位単純X線検査での確認がスタンダードな診断方法となります。しかし軟骨の擦り減り=変形性膝関節症ではありませんので、症状に応じて軟骨病変、骨髄病変、半月板病変、靱帯損傷などの評価を目的にMRI検査で確認を行うこともあります。確定診断のための診断基準はなく、年齢、臨床症状、単純X線像、関節液所見などから総合的に診断することになります。
治療について
現在医療では未だ一度擦り減った軟骨を元に戻すことは困難であるため、治療の第一目標はいかに軟骨の擦り減りを進行させず、かつ症状を和らげることが出来るかということになります。
①教育・運動療法・体重減少 【重要】
初期には膝に負担をかけない身体作りが重要となり、その為には変形性膝関節症への正しい知識を身につけ、下肢の筋力強化を行うと共に適正な体重維持を目指すことが重要となります。
運動療法の参考となるパンフレットは、厚生労働省ホームページなどでダウンロードができます。
ご自身での運動療法が難しいと感じる方は、お近くの外来リハビリテーションが行える整形外科などでご相談いただくことをお勧めいたします。
②鎮痛薬 内服/外用・関節内ヒアルロン酸注射
いわゆる「お薬」「注射」と呼ばれているものです。これらは変形した関節を元に戻す効果はありませんので「症状を和らげる」目的で使用します。もちろん効果が切れれば症状もまた出ますので、減量や運動療法などとの併用が不可欠になります。
なお、グルコサミンやコンドロイチンについて『変形性膝関節症診療ガイドライン2023』によれば、「鎮痛・機能改善効果、ADL/QOLの改善効果は認められず、軟骨保護作用も明らかではなく、これらの有用性はすべて否定的である」とされています。
③再生医療
保険外診療となり様々な治療方法が提案されています。多くの場合が自身の身体から『幹細胞』を採取し、これを培養して数を増やし関節に注入することで、炎症や血管増生の抑制効果が期待できます。未だ軟骨の再生にまでは至っておりませんが、短期から中期の除痛効果は確認されている治療法です。
④手術療法
上記①~③の治療を行った上で症状にお困りの方には、その方の症状や変形に適した手術療法を検討します。
A.関節鏡下滑膜切除/半月板切除
関節鏡を用いて関節内で炎症性に増殖した滑膜を切除、また損傷して引っ掛かりや痛みの原因となっている半月板を切除し症状を和らげる方法です。変形自体は改善しません。変形が軽い方の症状緩和は期待できますが、変形が強い方はあまり効果を実感できない可能性があります。
以上、変形性膝関節症について説明させていただきました。当科では各種の手術を行っており、また再生医療も紹介させていただいておりますので、手術や再生医療にご興味のある方はご相談ください。
詳しくはこちらの診療科にて