当院における臨床工学技士の業務
臨床工学技士法に載っている臨床工学技士の業務は、「生命維持管理装置の操作・保守点検」となっていますが、一口に「生命維持管理装置」といっても多種多様にあります。また、狭い意味では人工呼吸器、人工心肺装置、人工透析装置の3種類だけのように思えますが、例えば血圧が低下して生命の維持も困難な状態(ショック状態)の患者様に対して、血圧を上げるための薬を続けて入れるために用いられているポンプもある意味「生命維持管理装置」と言えるでしょう。これらの機械の操作はもちろん、安全に使えるように点検するのも臨床工学技士の業務です。当院には、8名の臨床工学技士がおり、以下のような業務を主に行なっています。
血液浄化業務

透析は先にも触れましたが、腎臓の機能が悪くなった患者様に対して、本来ならば尿として排泄される老廃物や余分な水分、電解質などを、血液を体の外へ出して濾過し、再び体内に戻す治療です。私たちは、この透析療法に使用する機械を準備したり、操作をしたり片付けたりはもちろん、血液を体から出し入れするための針刺し、透析が終わったあとに針を抜いたり、抜いたあとの血を止める作業、器具の選定や、透析が安定して受けられるようになった患者様が通院するための施設を探したりと、いろいろな業務を行なっています。
また最近では、血液の中のばい菌や毒素を直接除去する血液吸着や血漿交換療法なども行なっています。
人工心肺業務

心臓の手術をするときに、心臓を止めなければ手術ができないものがあります。この時に、その心臓の働きを代行する機械が人工心肺装置です。人工心肺は、心臓に戻ってくる血管から血液を体外に出し、人工肺と呼ばれる器具で血液中の二酸化炭素と酸素を交換し、再び体内に戻して全身に循環させる装置です。
私たちは、この人工心肺装置の準備や運転、手術終了後に血液を体内に戻す作業をはじめ、手術中の状態観察(血液検査や電解質のバランスなども含む)や水分バランスの調整なども行ないます。
その他に、心臓や肺が弱っている患者様に対し、病棟やICUなどで行なわれる簡易的な人工心肺(PCPS)や、心筋梗塞や狭心症などの際に、心臓の血管(冠動脈)に血液が流れやすくする装置(IABP)の準備、操作、保守点検なども行なっています。
人工呼吸業務

(ICU)
当院の場合、人工呼吸器の操作や条件の設定は医師が行なうことになっており、私たちは主に治療の準備や、患者様移動の補助、保守点検などを担当しています。
当院では一度使用した人工呼吸器は、清掃のあと必ず臨床工学科(医療機器管理室)で清潔なチューブに付け替え、動作点検をしてからでないと、次に使用することができないシステムになっており、常に安全で清潔な機器な機器の使用ができるような体制ができています。
医療機器管理業務
当院に限らず、病院内には多種多様の医療機器が存在します。例えば先に記しました人工呼吸器はその代表的な機器の一つですが、その他に点滴用のポンプや心電図や呼吸状態などの波形を常時確認できるモニターなどを一括で管理し、定期的な保守点検や故障時の修理、メーカーさんからの情報管理などを行なっています。
その他
その他の業務としては、肝胆膵内科や泌尿器科における、ラジオ波を用いた腫瘍の焼灼術の介助、在宅医療に用いる各種医療機器の確認などの診療業務に加え、医療安全、防災、システム情報、医療ガスなどの委員会に参加し、安全やシステムの分野でも活動しています。また都内に何校かある臨床工学技士の養成校から、学生の臨床実習も受け入れており、後進の指導にもあたっています。今後は更なる業務の拡大(ペースメーカー業務や結石の破砕、中央管理機器の拡大など)を目指していきたいと思っています。