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病気のはなし

糖尿病に関する最近の話題 2023年度

2024年8月

部長 岡畑純江

猛暑の8月、みなさま元気でお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。新型コロナウイルス感染症が2023年5月に「5類感染症」に移行し1年が経過しました。このような時代にも糖尿病治療の歴史は紡がれ2021年にはインスリン発見100年の節目を迎えました。糖尿病患者さんの寿命の延伸のみならず質を考慮した「糖尿病をもつ人が安心して社会生活を送り、人生100年時代の日本でいきいきと過ごすことができる社会形成を目指す活動(アドボカシー活動)」が日本糖尿病学会・日本糖尿病協会(以下、日糖協)により提唱されています。当院でも1975年に設立された糖尿病患者会「欅(けやき)会」が2025年に創立50周年を迎えるべく活動しております。日糖協の月刊誌「さかえ」の2023年度の特集タイトルから糖尿病を取り巻く最近の話題を纏めてみたいと思います。

2023.4 甲状腺疾患と糖尿病との気になる関係とは?

甲状腺機能亢進症には主に3つの病型(バセドー病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎)があります。亢進状態では肝臓でのグリコーゲン分解や糖新生(アミノ酸や脂肪を分解することでブドウ糖を作る反応)が亢進すること、取り込まれたブドウ糖がグリコーゲンに合成することを阻害されることで糖代謝が悪化することが分かっています。

2023.5 糖尿病と抑うつ

「5月病」との関連で「抑うつ」が取り上げられています。誰もが経験しうる「抑うつ状態」と専門家による治療が必要な「うつ病」の状態があること、そして生活習慣病では抑うつ状態は5人に1人程度の割合で認められると記されています。その対処として大切なのがセルフケアであり①睡眠②最強の3つのセルフケア(運動、栄養、柔軟な考え方)が提案されています。

2023.6 糖尿病と熱中症

日本の夏は気温が高いだけでなく湿度が高く熱中症には注意が必要です。熱中症の初期症状は「めまい、顔のほてり、筋肉痛やけいれん、体のだるさ、吐き気、汗が止まらない、全く汗をかかない、体温が高い、皮膚が赤く乾いている、呼び掛けに反応しない、真っすぐ歩けない。」等、様々です。糖尿病患者さんは熱中症のリスクが高いことが分かっており注意が必要です。

2023.7 気を付けよう!夏場にも多い脳梗塞

脳梗塞は脳に血流を送っている血管が詰まってしまい血流が途絶えることで様々な症状を起こす疾患です。「突然・片方の」顔がゆがむ(F:FACE)、腕が動かない(A:Arm)、言葉が出なくなる呂律(ろれつ)が回らなくなる(S:Speech)の症状の1つあれば約7割の確率で脳卒中が疑われます。。発症時間(T:Time)を確認する「ACT-FAST」を知っておいてください。

2023.8 1型糖尿病によるケトアシドーシス

1型糖尿病(T1DM)は膵臓からのインスリン分泌低下により発症します。インスリンが欠乏すると脂肪が分解されて遊離脂肪酸(FFA)が増加します。FFAは肝臓でケトン体に変化し、大量のケトン体により体が酸性に傾いた状態をケトアシドーシスといい高血糖を伴うと糖尿病ケト(アシド)ーシスを呈します。T1DMの発症時やインスリンの注射忘れ、インスリンポンプの不調、SGLT2阻害薬の使用時等で生じ、速やかな補液とインスリンの投与が必要です。

2023.9 緩徐進行1型糖尿病(SPIDDM)って知っていますか?

1型糖尿病には急激に発症する「急性」と「劇症」のほかに「緩徐進行(Slowly Progressive Insulin dependent Diabetes : SPIDDM)」があり2023年に診断基準が改定されました。【糖尿病の経過中に膵島関連自己抗体が陽性である、診断医にケトーシスもしくはケトアシドーシスがない、経過とともにインスリン分泌が緩徐に低下する。】などが特徴です。

2023.10 周術期の血糖管理

糖尿病患者さんの二人に一人が一生のうちに何らかの手術を受けるとされています。高血糖状態での手術は創傷治癒遅延(傷口の治りが遅くなる)・感染症が合併しやすいことが知られており、周術期(手術を受ける際)は血糖値140~180mg/dLを目標に治療を行います。

2023.11 もうひとつのインクレチンGIP

世界中で幅広く糖尿病治療の道いられているDPP4阻害薬やGLP-1受容体作動薬は”インクレチン“の働きに基づいて開発されました。近年、さらにGLP-1の双子ともいわれるGIPの治療薬が登場し、血糖と体重のコントロールに更なる期待が持たれています。

2023.12 糖尿病と心不全の深~い関係

心不全とは「心臓がわるいために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」です。糖尿病があると動脈硬化が進行しやすく心筋梗塞などの発症が約2倍に、心房細動の発症が約40%増えるなど心不全を生じやすいことが知られています。

2024.1 糖尿病アドボカシーの新時代―新たな呼称提案についてー

「糖尿病のある人が不利益を被らないためのアドボカシー活動」の一環として糖尿病の名称を「ダイアベティス」とする提案が出されました。今後、開かれた議論が展開される予定です。

2024.2 冬こそ大切!糖尿病に合併した高血圧のケア

糖尿病のある人が高血圧を合併する確率は、糖尿病のない人よりも2倍高いといわれています。さらに降圧の目標達成率が低いことも知られています。①食事②体重管理③運動④嗜好品(飲酒、喫煙)を基本に薬物療法も取り入れながら適切な治療が大切です。また冬場は入浴に関連した急激な血圧変動(ヒートショック)にも注意が必要です。

2024.3 低血糖の重症化とその予防

血糖値は83mg/dL以下でインスリンの分泌抑制が生じ血糖低下を妨げ、70mg/dL以下でアドレナリンやノルアドレナリンを分泌し血糖上昇を試み自律神経症状(動悸、頻脈、発汗など)の低血糖のサインが出ます。60mg/dL以下ではさらにグルカゴンを分泌し中枢神経症状(眠気、異常行動、けいれんなど)を呈します。対応せずに重症低血糖に至ると、意識障害などが現れて自分では対応できず周囲の人の助けが必要になります。

今年は暑さに加えてCOVID-19の感染再拡大も相まって厳しい夏が予想されます。適度な水分摂取と規則正しい食事、運動、睡眠で体調を整えていただき、脱水症・感染症を予防しつつどうぞ良い夏をおすごしください。

詳しくはこちらの診療科にて

糖尿病・内分泌内科

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