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病気のはなし

赤ちゃんの脳に鉄分を

小児科部長 石川久美子
(緑のひろば 2011年10月号掲載)


生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、実はまだ完成していません。生まれた時に400gだった脳は、3歳で大人の脳の重量のなんと80%まで成長します。また、1〜2歳で神経細胞のネットワークはダイナミックに完成していき、運動面でも精神面でも赤ちゃんはどんどん発達していきます。赤ちゃんの脳の発達を促すために栄養は大切ですが、脳に不足しがちな栄養素として「鉄」が注目されています。

「鉄」は脳の細胞と細胞の間の刺激が伝わる成分を作る上で重要です。また、「鉄」が不足すると、細胞に酸素を供給しているヘモグロビンが十分に作られず貧血になります。2歳以下のお子さんで鉄欠乏状態が3ヶ月以上続くと、認知能力、運動発達、社会性や情緒発達に影響を与える可能性があると言われています。さらに、離乳期の鉄欠乏による貧血が続くと、発達の遅れをその後何年も引きずってしまう可能性があることがわかってきました。
生後6ヶ月以降は、母乳だけでは鉄は足りません。赤ちゃん自身がお母さんのおなかの中でもらった鉄のストックが底をつくと同時に、母乳の鉄分は最初の頃に比べて6割程度に減ってきます。赤ちゃんの脳は更に多くの鉄を必要としてくる時期なので、脳の発達にとっては深刻な事態です。

緑黄色野菜では、かぼちゃやモロヘイヤなどがおすすめです。葉酸や、抗酸化作用のあるビタミンEやβカロテンも摂取できます。海藻類ではひじきやのりがおすすめですが、のりはのどに貼りつきやすいので小さく切るか軽く煮るといいでしょう。海藻や大豆や緑黄色野菜に含まれる鉄分は非ヘム鉄といって吸収が悪い鉄ですが、ビタミンCと一緒に摂取することで吸収が高まります。ビタミンCの多い淡色野菜や芋と一緒に食べるといいでしょう。

生後9ヶ月以降では、鉄欠乏のお子さんが増えているので特に注意が必要です。魚ではカツオやマグロの赤身がおすすめです。かぼちゃやにんじんなどの野菜と一緒に調理すると、DHAなどの脳に必要なω3系不飽和脂肪酸も効率良く摂取できます。肉ではヒレやモモなどの赤身の部分、特に牛モモ赤身がおすすめです。とろみをつけたり、マッシュしたじゃがいもと一緒に調理したりすると、ポソポソした肉の食感がなくなり食べやすくなります。レバーペーストも便利です。赤身の肉や魚に含まれる鉄分はヘム鉄といって、吸収しやすい鉄分です。

頑張っても離乳食が進まないお子さんは、鉄分の豊富なフォローアップミルクを9ヶ月頃から活用してみましょう。離乳食がすすまない、風邪をひくと長引くなど様子が気になる時は、小児科にご相談ください。診察させていただき、必要があれば栄養相談や検査を受けることができます。
どんなに工夫しても、離乳食を食べてくれない時はあります。でも、がっかりして叱ったり、無理強いしたりしないでください。「食べることは楽しいこと」、その気持ちはお子さんに一番あげたい愛の栄養素です。


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