病気のはなし
間質性膀胱炎
間質性…炎と言うとまず思い出すのが間質性肺炎なのではないでしょうか?これは普通の肺炎と違って細菌に因るものではありません。極端に言うと肺が硬くなって動きが悪くなる、息苦しくなる病気です。間質性膀胱炎も同様に、膀胱が硬くなってしまう病気です。細菌によるものではありません。そうするとどうなるのでしょうか?尿が溜まると硬くなった膀胱の壁が引き延ばされて痛くなります。膀胱の壁が裂けて血尿が生じたりもします。今回はそんな間質性膀胱炎のお話です。
原因
細菌によるものではなく、主にリウマチなどと同じく、自己免疫によるものと考えられていますが、はっきりした原因は今でも不明です。以前はこのような症状があっても検尿ではっきりした所見がないため「精神科にいってくれ!」なんてケースもありました。膀胱の一部を取って調べてもこれぞ!!と言う所見はなく、慢性膀胱炎と診断されてしまうのが殆どです。
診断
まずは症状です。おしっこする時に痛いのではなく、尿が溜まった時に痛くなるのが特徴です。検尿は血尿が出ることもありますが、所見のないこともよくあります。それらから間質性膀胱炎を疑った場合は膀胱鏡を行い、
膀胱を膨らませた時に膀胱の壁が裂けそうになるかを確かめます。それが認められれば、まず間質性膀胱炎です。他の神経疾患がないことを確かめるため、膀胱機能検査を行うこともあります。また、症状が過活動膀胱と被っていることもあり、過活動膀胱として漫然と治療されているケースも多いようですが、過活動膀胱は症状のみで決める病態・症候群なのに対し、間質性膀胱炎はきちんとした検査等の所見のある疾患・病気なので、診断を誤らないようにする事は、症状の改善・治療の為にとても重要です。一時、学会でも間質性膀胱炎と過活動膀胱は表裏一体の疾患ではないこと本気で論議されていた時代もありました。
治療
まずは内服、お薬を飲む治療です。膀胱を軟らかくする抗コリン剤を試してみたり、抗アレルギー剤、免疫を弱めるようなステロイドを出させる漢方薬を使ってみたりしています。抗うつ剤も使っている医師もいらっしゃいます。本物の免疫抑制剤は体全体の事を考えると避けるべきです。ただ今のところ、これぞ!!という決定打はありません。という訳で内服治療が限界を迎えた時、次に控えるのが手術療法です。膀胱水圧拡張術です。当院は世田谷区に二つある膀胱水圧拡張術施設基準取得施設の一つです。間質性膀胱炎は膀胱が硬くなっている、筋肉繊維同士が強くくっついている状態なので、膀胱を強引に拡げて筋肉繊維を切り裂いてしまおうとする治療です。それによって膀胱を軟らかくしようとする治療です。術中は内視鏡で膀胱の壁が裂けるのを観察しながらおこなっていきます。もちろん、膀胱が破裂しないように注意深く観察することも怠りません。膀胱にはこれ以上水圧をかけるな、これ以上は膨らませるなという基準あり、厳守して行います。話を聞いているだけでもう痛くなってしまいそうですが、当院ではきちんと麻酔をかけて行っており心配ご無用です。私の知り合いの女性泌尿器科医は無麻酔で行っており、「大丈夫だから先生もやってみたら」と誘われましたが、私は臆病なのでそんな勇気はありません。ただこの治療も根治(完全に治す)治療ではなく、半年から2年程度でまた膀胱の壁は傷が癒えて硬くなってしまいます。その際は再度の施行になるわけですが、その間隔を延ばすために膀胱内に薬剤を入れて膀胱を柔らかくする治療も、やっと保険適応になりました。実はこの治療が有効なことは私は25年以上前から知っていたのですが、保険が効かないため、使えない状態が続いておりました。以前お話ししたボトックスと同じ状態でした。
現在当院では間質性膀胱炎の世田谷区メインホスピタルとして病診連携体制の構築を目指して各先生方と協力の元、活動中であります。
間質性膀胱炎は必ずしも多い疾患ではありませんが、患者様にとっては過活動膀胱以上に深刻な状態に陥ってしまう疾患です。しかし、治療する事により症状の改善を望める疾患でもあります。そのためには正しい診断・治療は非常に重要であると考えております。
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