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病気のはなし

心房細動の治療についてお話しします

2024年10月

医長 松原 巧

心房細動。聞いたことはあるけれど、具体的にはわからない。そう思われる方が多いのではないでしょうか。ここでは心房細動について治療まで含めてお話しをしたいと思います。

まずは心臓の構造から。心臓には4つの部屋があり、上の部屋は心房、下の部屋は心室といいます(図1)。さらに上下の部屋は左右にわかれていますので、それぞれ右心房、左心房、右心室、左心室と呼ばれます(図1)。正常の調律は右心房にある洞結節という天然のペースメーカのような組織が作っています(図1)。””結節が作る”調律”なので、”洞調律”と名前がついています。この洞結節が一定の間隔で電気信号を発して、その電気信号が心臓の中にある電線の役割を担う組織(刺激伝導系)に伝わることで心臓は動きます。心房細動は心房で400回/分以上の電気信号が発生し、心拍が不規則になる特徴があります。心房細動はほとんどの場合は脈が早くなる”頻脈性不整脈”として現れます。頻脈性不整脈は心拍数が早くなる不整脈のことを指し、頻脈の定義は心拍数が100回/分を超えた状態を指します。症状は動悸、息切れ、倦怠感などが多いと言われていますが、実は1/3程度の患者さんは自覚症状がないと言われています。

心房細動の治療についてお話しします 図 1. 心臓の構造と洞調律、心房細動

房細動は脳梗塞や心不全、認知症の危険因子になる不整脈で、自覚症状がない場合でも長期的には生命予後にも影響する不整脈です(図2)。そのため、早期発見、早期介入がとても大事です。近年心房細動は増加傾向にあり、現在約70万人以上の心房細動の患者さんがいると推定されており、40歳以上の人口の1.6%程度とする報告もありますので、実は身近に存在する不整脈なのです。診断には心電図が必要です。病院でとる心電図以外には、スマートウォッチで記録された心電図で診断する場合もあります。

心房細動の治療についてお話しします 図 2.心房細動は危険な不整脈なの?

治療には薬物療法カテーテル・アブレーションがあります。薬物療法には脳梗塞を予防するための抗凝固薬と、心房細動そのものを抑え込むための抗不整脈と呼ばれる薬剤を使って不整脈の発生を抑制する方法(リズムコントロール)、心房細動中の心拍数を調整して症状を和らげる方法(レートコントロール)があります。
抗凝固薬の服用を継続することで脳梗塞の危険を約80%軽減できるとされています。脳梗塞予防の薬を服用するかどうかは患者さんごとの危険因子の有無で判断していきます。
①心不全がある、②高血圧がある、③75歳以上である、④糖尿病がある、⑤脳梗塞の既往がある、のいずれか一つでも該当した場合は抗凝固薬の服用が必要です。ご自身の危険因子については把握しておくことが大事です。
心房細動に対する抗不整脈薬の有効性はおよそ30〜50%程度とあまり高くなく、かつ薬物は一時的な効果のみで、心房細動の根治ができません。根治が見込める治療方法はカテーテル・アブレーションのみです。
カテーテル・アブレーション(心筋焼灼術)はリズムコントロールの1つです。カテーテルと呼ばれる器具を使用して不整脈の原因となっている組織に熱エネルギーなどを加えて不整脈が起こらないようにする治療を言います。アブレーションは”焼灼”という意味です。三次元マッピングシステムを活用して不整脈を治療することが一般的で、当院は全ての患者さんの治療に三次元マッピングシステムを用いています(図3)。三次元マッピングシステムを活用したカテーテル・アブレーションは安全性が高いだけでなく、被曝線量も軽減できることが知られています。特に現在の当院のカテーテル・アブレーションは被曝線量が極めて少なく、2023年以降は従来の2%以下にまで被曝線量を軽減できています(当院比較)。当院でアブレーションを受けられる患者さんの約80%が心房細動です。入院期間は2泊3日から3泊4日です。高額療養費制度の対象になっている手術ですので、自己負担が少なく手術を受けていただけます。

心房細動の治療についてお話しします 図3. 三次元マッピングシステム(心房細動例)

心房細動は持続期間によって定義が異なります。1回の不整脈発作が1週間以内に停止する発作性心房細動、1週間持続するものは持続性心房細動、1年以上持続しているものは長期持続性心房細動と呼ばれます。進行していくについてカーテーテル・アブレーションによる治療成績は悪くなっていきます。具体的には発作性心房細動では80-90%の患者さんで根治可能と考えられていますが、持続性心房細動になると50%程度にまで下がってしまいます。「心房細動があります」と言われたら早期の治療を検討することが重要で、目安として6ヶ月以内を推奨する報告もあります。ただし診断から時間が経っていても、治療しなくて良いわけではありません。症状がある方は積極的に治療を考えるべきとされています。
治療を受けるかどうかは自覚症状の有無だけで判断するものではなく、長期的な心房細動による合併症のリスク軽減を目的として行う場合もあります。症状が軽いもしくはない場合でも治療を検討すべき患者さんは大勢おられます。治療を受けるかどうかは不整脈専門医と相談することが大事です。カテーテル・アブレーションは重篤な合併症は非常に少なく、安心して受けられる治療です。2023年から当院でも常勤医によるカテーテル・アブレーションが行われていますが、重篤な合併症はありません。さらに当院には心臓血管外科が設置されていますので、バックアップ体制も大変充実しています。

本日は心房細動とその治療についてお話をさせていただきました。「詳しいことをもっと聞きたい」、または「今まさに心房細動で困っている」、などありましたらいつでも当院循環器内科にご相談ください。不整脈心電学会認定専門医が対応いたします

詳しくはこちらの診療科にて

循環器内科

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