病気のはなし
産婦人科領域 最近のトピック
新しい年度に入り、環境が変わったり、新しいことを始めたり、身の回りにもいろいろな変化があるのではないでしょうか。産婦人科領域でもこの春に特に注目されているトピックが2つありますので、皆さんにお知らせしたいと思います。
9価のHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)が、公費でうてるようになりました
子宮頸がんのほとんどが、HPV(ヒトパピローマウイルス)が子宮頸部に感染することで起きています(図1)。HPVの種類は200種類以上ありますが、そのうち子宮頸がんと関連が深いハイリスクのタイプに感染しないように接種するワクチンがHPVワクチン、いわゆる子宮頸がんワクチンです。毎年中学1年生から高校1年生になる女性が定期接種の対象になっていますが、令和7年3月31日までに限って、平成9年4月2日以降生まれの女性も自己負担なしでワクチン接種が受けられます
従来からのHPVワクチンは2価または4価のもので、子宮頸がんの原因ウイルスのうちHPV16型とHPV18型の予防効果があるものです。さらに今年4月からは31, 33, 45, 52, 58型の予防効果もある9価のワクチンが公費でうてるようになりました。これによって、図2のように若年女性の子宮頸がんの原因ウイルスの9割以上をカバーできることになります。ただ、折角効果の高いワクチンがうてるようになっても、接種率が低ければ子宮頸がんは撲滅できません。もしも、身近に公費接種の対象年齢の方がおられるようなら、ぜひ対象年齢のうちにワクチン接種をするようお声がけ下さい。対象年齢以外の方も、自費でのワクチン接種は可能です。
梅毒急増中
梅毒と聞くと、昔の花街の感染症というイメージを持つ方もおられるのではないでしょうか。実際、梅毒の治療としてペニシリンが発見されて一気に患者数が減少しました。それなのに今、都内の梅毒が急増しており、10年前の約12倍となっているのです。(グラフ1)
梅毒は、主に性交渉で感染する性感染症で、感染後数週間の潜伏期間の後に、鼠径リンパ節が腫れたり皮膚にバラ疹といわれる発疹が出たりします。
ただ、無症状のまま経過したり、症状が出てもごく軽く済むことがあり、気づかないまま過ごされることもよくあります。実際、当院で梅毒感染がわかった方のなんと6割は、症状が出たり心当たりがあったから受診されたのではなく、入院時や手術前の検査・妊娠初期のスクリーニング検査で偶然梅毒感染が判明していました。また、全国の調査でも、性風俗産業の利用歴・従事歴のない感染者が約3割いると報告されています。ですから、巷には実際の報告者数以上に梅毒が広がっていると考えるべき状態なのです。
梅毒・HIVは、全国の自治体で無料で匿名で検査可能です
普段と違うパートナーや不特定の相手との性交渉があった、などリスクの高い行動があった場合は、早期発見のために検査を受けましょう。
梅毒の治療として、1回の注射で完了する製剤もあります
治療薬としてはペニシリンが有効です。従来は4週間以上の内服が必要だったのですが、昨年1月に1回の投与で治癒も可能な注射製剤が日本でも使用可能になりました。当院でも使用していますが、皆さん追加治療をせずに完治されています。
当院の産婦人科は平日月曜から金曜まで午前中は毎日外来診療をしています。3名の診療担当医は全員日本産科婦人科学会の専門医を持つ女性医師ですので、HPVワクチン接種をお考えの方、性感染症が心配な方も含めて婦人科領域の心配事は気軽に受診してください。
(※当院は地域医療支援病院の指定を受けており、紹介状を持参されない初診の方は、初診料以外に選定療養費の負担が義務付けられています。)
詳しくはこちらの診療科にて