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病気のはなし

変形性関節症と人工関節置換術

2021年2月

部長 赤坂 嘉之

長距離を歩いた後、関節がだるくなる、関節を動かすと痛い、関節の動く範囲が狭くなったなどの症状を感じたことはないでしょうか。それは「変形性関節症」の症状かもしれません。
関節の病気で命が脅かされることはないし、様子を見ていればよくなるかもしれない。この程度の痛みなら”がまん”できると考えたものの症状はよくならず、その後外来受診したとのお話を外来診療で伺うことがあります。今回のお話は「変形性関節症(膝関節、股関節)」とその治療法の一つである「人工関節手術」についてです。

変形性関節症について

「ひざが痛い」「足の付け根(股関節)が痛い」病気の一つとして、関節軟骨がすり減ることによる「変形性関節症」があります。痛みで動けなくなることによる体力の低下、運動しづらくなることでの内科疾患コントロール上の問題、人との交流が疎遠になることによる精神的な問題も治療方針として考えないといけません。
整形外科外来で行う内服薬や外用薬の投薬・関節注射・リハビリや、ご自身で頑張って頂く筋力訓練などの保存治療も有効であるため、「治療によってどの程度生活がしやすくなりますか?」という患者さんの視点に立って治療法を提案させていただいております。
痛みが強く、日常での生活動作が不自由で、我慢をしながら生活を送るようになってきた場合に考える治療法の一つに、手術治療があります。当院では主に手術治療が必要な患者さんへの入院治療、関節痛の診断などを行わせていただき、長期的な保存治療に関しては通院の便の良い整形外科にお願いしております。
手術治療には「関節鏡」によるもの、ご自身の関節を温存する「骨切り術」、そして「人工関節手術」があります。なかでも「人工関節置換術」を受ける患者さんは年々増えております。

変形性関節症と人工関節置換術

人工関節置換術について

手術治療は、すべての患者さんに対して必要なわけではありません。しかし、手術が必要な方に対しては、痛みを取り除き、我慢していた社会生活を取り戻すことができるように考えて手術治療を計画します。「人工関節置換術」は、傷んだ関節を金属やポリエチレンによる関節面に置き換える手術です。たとえるならば、虫歯で傷んだ箇所を削ったり、抜歯し、インプラントで置き換え、咀しゃくの動作が苦痛なく行えるようになることに類似するかもしれません。
近年の人工関節手術では、低侵襲手術(MIS)、患者さんにあったインプラント(体内へ入れる器械)選択があります。また適応症例では同日両側手術、コンピューターを用いた患者さんごとの術前評価と計画、術中支援としてのナビゲーション、ロボットの使用などの技術と知識を応用し、患者さんの術後機能と満足度を向上させる努力が行われています。
当院でも、人工股関節置換術では術後行動制限が少なくなるような低侵襲の手術方法で患者さんごとに適したインプラントを選択して行っています。股関節痛、人工股関節全置換術の詳細については「人工関節ドットコム」もご覧ください。また、人工ひざ関節置換術は、病状に応じて人工膝関節全置換術(TKA)以外に、部分的な人工関節である単顆置換術(UKA)も適応のある患者さんに対して行っています。患者さんが人工関節置換術を受けたことを忘れて生活できるような、生活しやすい、使いやすい手術を目指して治療しています。
「人工関節置換術」は、変形性関節症など関節軟骨が摩耗・破壊が生じた患者さんの痛みを取り除き、我慢していた社会生活・行動範囲を取り戻すことができる良い治療手段です。しかし、いざ手術を決断したときに気に掛かる点は「人工関節はどのくらいもつのか」ということではないでしょうか。近年、手術手技の向上や体内に入れるインプラントの質が良くなったことに伴い、20~30年の耐久性が報告されています。長期経過中に不具合(摩耗・ゆるみなど)が生じる可能性もあることから、当院では人工関節置換術を受けた患者さんには術後症状がなくても、年1回程度の定期的な経過観察を目的とした受診をお勧めさせていただいております。
「歳だから・・・」とあきらめていませんか。少子超高齢社会の今、生涯自分の力で歩きたい、生活を楽しみたいという皆様にお役に立てる治療法を、患者さん一人ひとり一緒に考えて治療していきます。ぜひ一度ご相談ください。

人工股関節全置換術

人工膝関節全置換術

人工膝関節単顆置換術

最後に・・・コロナ禍で私たちにできること

東京でオリンピック・パラリンピックが行われ明るい一年となるはずであった2020年は、新型コロナウィルス感染症に世界中が振り回され、今この時でも私たちの生活・行動の自由が引き続き制限されています。緊急事態宣言下ではさらに活動性が低下し、骨、関節、筋肉の障害が増えると考えられます。そこで、日本整形外科学会ホームページ上でも高齢者向けの運動を中心に様々なトレーニング法を紹介しています (ロコモチャンネル)。ご興味のある方は、「コロナ ロコモ 動画」で是非検索してみてください。
今回紹介した「変形性関節症」は、「ロコモティブシンドローム」の原因疾患のひとつです。変形性関節症に対する運動療法など可能な範囲でのご自身の努力は必要です。また、活動性低下による転倒などの危険を未然に防ぐ観点から、適切な時期に手術治療を行うことも重要です。
近い将来、人類はこの未曾有の感染症に打ち勝つことが出来ると信じています。私たちも、この感染症を決して侮らず、しかし必要以上に怖がらず、個人個人が可能な範囲で努力、我慢そして運動を続けていきましょう。

(注) ロコモ(ロコモティブシンドローム):骨、関節、筋肉など身体を動かす仕組みを運動器といいます。これら運動器である足腰の動きが衰え移動機能の低下した状態を「ロコモティブシンドローム」と2007年日本整形外科学会が定義しました。
詳細は前述のホームページをご参考ください。また、「緑のひろば2012年10月号」でもご紹介しております。

詳しくはこちらの診療科にて

整形外科

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