病気のはなし
ウチはガン家系なんだって?
ウンザリの疫病禍で、コロナだインフルエンザだ他の予防接種だなど、何がいつだか何回目だか覚えるの大変でしょう?そんな中、原稿の依頼を受けました。
感染症は嫌ですが、家族でうつることもあります。でも、ウチはコロナに罹りやすい家系だとか、遺伝的にインフルエンザになりやすい、なんて聞きません。一方、ウチはガン家系だから私もきっと。とか、おじいちゃんやおばあちゃんがガンだから僕も。など口にされるヒトは多いのです。みなさんはどうでしょう。さて、そもそもガンは遺伝の病気でしょうか?という話しを今回は始めましょう。
ガンですが、遺伝の病気ではなく、遺伝子の病気と考えた方がよさそうです。遺伝と遺伝子。外国語だと全く違う言葉ですが、日本語はよく似ており誤解されるのです。ご存知の通り、ガンはバイキンやビールスのように感染しませんよね。コロナのようには流行しません。おおもとは自分の身体の細胞のうち、いつの間にか発生した一個のガン細胞が2個、4個、8個,,,,と増えるのです。そもそもガンは何で育ってくるのでしょう?
人間のカラダは40000000000000個の細胞からできているそうです(数えたヒマ人はいないでしょうが)。この細胞が古くなったら壊れたり、必要な分は細胞分裂して増えたり、全身で調整されヒトは生きています。むかし理科で習った細胞分裂をおぼえていますか?細胞内にある核、中にDNAという二重ラセンのひもがあり、コピーされ核が2個になり、そして細胞が2個に分かれていく。4,8,16,32個,,,と増えていく。思い出しましたか?2つに分かれた細胞は元とそっくりそのまま。DNAにある大切な記録(遺伝情報)をコピーしていくのでした。ここで疑問があるはずです。40000000000000個の細胞がコピーのミスなくしっかり伝わるの?本当に大丈夫?と、考えますよね。そのとおり、大丈夫ではありません。このDNAですが、じつはすごい回数で壊されまくっています。
タバコをはじめ化学・有害物質、各種刺激、放射線、日光・紫外線などデリケートなヒトは過敏な反応がでます。ヒトが反応を自覚しなくても、細胞たちは当然同じ仕打ちを受けています。その際、DNAはとてもデリケートで傷だらけになり、情報に傷がついてしまいます。細胞1個が1日に傷つく回数は驚くなかれ、1日50万回とも報告されています。DNAに傷がつくと、多くの細胞は死んでしまうか、生き延びたら本来と違った性格になり育っていきます。これが腫瘍の発生原因の一つで、多くのガンも同じです。しかし、こんなペースで傷つくとヒトが育つわけありませんよね。
実は感心したもので、ヒトはこの傷ついたDNAを修理する働きをもっています。傷ついたDNAの遺伝情報をもとにもどす修理屋さんが存在し(修復酵素)、この修理屋さんは遺伝で伝わるものの一つです。DNAが傷ついたら、間違った細胞に分裂したり死んでしまわぬうちに修理してくれます。修理屋さんは無数の種類と数がありますが、たまたま欠落していたり、傷が多すぎて修理が追い付かないと、これはガン発生の原因になるのです。修理屋さんですが根本的に働きが悪いとか、もともといないというヒトが存在し、代々伝わっている可能性があります。これが家系での遺伝です。この不都合のある修理屋さんの種類により、どんなガンが育ちやすいかも変わってくるのです。おじいさんが前立腺ガンでおばあさんは肺ガン、お父さんは大腸ガンでお母さん胃ガン、だから自分もきっと、とは考えすぎ。ただしヒトは長生きすればガンになりますけど・・・。
難解でしょうか?簡略に数行でまとめましょう。DNAの傷を治しきれないとガンになることがあり、傷ついたDNAの修理屋が存在するはずなのに、家系的にこの修理屋がいないことが遺伝で伝わることがある。となります。どんな修理屋がいない、または働きが悪い、などでどんなガンができやすいのかも予想できる時代になってきます。最後までお付き合い頂いた読者の皆さん。もう一回、ガンそのものが遺伝するのでなく、遺伝子修理の不都合でガンができることが多いようだ。修理屋のことは遺伝することもあるようだ。と考えて下さい。ガン本体が遺伝病とは違うのがわかりますね。
実は現在、この遺伝子異常に対する病気の研究と診療については、治療法も含めて凄まじい勢いで進化しています。新しい発癌のメカニズムも解明されるでしょう。これからも科学の進歩に乞うご期待!
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