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病気のはなし

乳腺のMRIについて

放射線科 國又 肇
(緑のひろば 2014年4月号掲載)


今回の病気の話は、乳腺のMRIについてお話します。

みなさんが病院の乳腺外科あるいは乳腺科を受診されるのは、乳腺に何らかの症状(痛みがある、しこりが触れるなど)がある場合や、乳癌検診で要精査と判定された場合だと思います。

診察は問診・触診にはじまり、さまざまな検査が行われ、乳腺のMRIは、さらに詳しい画像診断が必要とされた場合に行われていました。しかし、最近は乳癌治療の変遷にあわせて、最近は撮影する目的が多様化してきました。

中でも乳癌の手術術式が乳房切除術から乳房温存術が主流となってきたことと関連して増えきた検査目的が、“乳癌の広がり診断”です。日本では2003年に乳房温存術が胸筋温存乳房切除術を上回り、現在では約60%を占めています。

乳癌は、乳管という乳汁を分泌する管にそって周囲に伸びていることが多く、また顕微鏡で見た場合約60%で多発しているとされています。不十分な広がり診断や多発病変の見逃しは手術で腫瘍を取り残してしまう結果や早期の再発につながってしまいます。乳房温存術を施行する場合、乳癌の位置や形、乳管に沿った腫瘍の進展などを詳細に検討し、切除範囲を決定するのにMRIは有用です。

同様に最近多くなっている検査目的として、“乳癌の術前薬物療法の治療効果判定”があります。乳癌の薬物療法の進歩は目覚ましく、手術前に薬物療法がおこなわれることも増えています。薬物療法の効果判定には画像による評価が必要不可欠で、効果がない場合は薬物が変更されたり、薬物療法を中断して手術が行われることがありますが、この場合もMRIによる評価は有用です。

この他、最近注目を集めているのが、乳癌のMRIによるスクリーニングです。若年性乳癌には、遺伝子が関与していることがわかってきましたが、日本でも最近の調査で遺伝性乳癌の頻度が欧米と変わらないことが報告されています。欧米では遺伝性乳癌のMRIスクリーニングが有用とする報告がされ、日本でも乳癌MRIスクリーニングの対象者や検査方法などが現在検討されています。

MRIを乳癌手術前の病期診断として撮影した場合、病変はほぼ100%見つけられるとされています。このように書くと、MRIだけ撮影すればいいのではと思われる方もいるかもしれませんが、そう簡単ではありません。

なぜなら、乳癌術前検査のMRIで乳癌のある側の乳腺に新たに見つかった病変のうち、約三分の一は良性の腫瘍とされています。反対側の乳腺にもMRIで病変が見つかることがありますが、その病変が悪性である確率は30〜40%とされています。新たに見つかる病変の中にはMRIでしかわからない病変もありますが、これらの病変に対してどのように対応するのかということは現在検討中です。

また、乳腺のMRIは専用の装置を用いて撮影するため、腹臥位(うつ伏せ)での撮影を行います。手術や他の検査は背臥位(仰向け)で行い、この姿勢の違いで腫瘍の位置がかなり動くため、手術範囲を決定する際に問題となります。

乳腺のMRIでは造影剤を使用しない場合、病変を十分に評価することができません。そのため、MRI造影剤が使用できない方(MRI造影剤の副作用の既往がある方、腎機能が悪い方など)は、検査前にご相談いただく必要があります。

しかし、乳癌の診断はMRIだけでなくマンモグラフィやCT、超音波検査、造影超音波検査などを含めた総合画像診断で行い、必要な場合には病理学的検査を行い診断しております。多くの検査がありますが、それぞれが手順を踏んだ必要な検査ですのでご質問があれば担当医に確認し、納得したうえで検査を受けてください。


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