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病気のはなし

皮膚科医が皮膚がんを疑うとき

2019年10月

部長 鑑 慎司

私のこのできものは皮膚がんでしょうか?」診察室で患者さんからそのように問われることが時々あります。診察室のみならず、私の知人から飲食店で同様な質問を受けることもあります。さらに最近では携帯電話の写真のみで判断を求められることもあります。皮膚がんは患者さんが自ら早期に発見できるがんですので、気になるのもごもっともだと思います。そこで今回は皮膚がん、およびそれと紛らわしい疾患について述べてみます。

俗に「ほくろ」と呼ぶものは医学用語では母斑細胞母斑や色素性母斑といいます。黒くて平らな斑点(図1)が多いですが、普通の肌の色や褐色で半球状に盛り上がるもの(図2)も時々あります。生まれつきあるものも、大人になってから出現するものもあります。日本人の悪性黒色腫(皮膚がんの一種、図3)は足の裏に多いというのは事実ですが、日本人の足の裏にできる黒いものの大半は悪性黒色腫ではありません。以下のいずれかに該当する時は、悪性黒色腫の疑いがあります。①形が左右対称でない。②輪郭がぎざぎざしている、あるいは不鮮明である。③色むらがある。④直径6mm以上。⑤大きさ、色、形が変化している。しかしこれらに該当するものでも皮膚がんでないことがありますので、皮膚がんだと確定診断をするためには、ライトがついた拡大鏡で検査(ダーモスコピー)をしたり、皮膚病変を切除して病理検査をしたりする必要があります。

老人性色素斑(図4)、俗にいう加齢や紫外線でできる「しみ」は、境界が明瞭で、均一な色調の扁平な褐色斑です。なかには大きさが1cmを超えるものもあります。顔面、頸部、手背など日光によく当たるところにできやすいです。高齢者に多くみられますが、30歳前後で発症する場合もあります。

脂漏性角化症(図5)は円形または楕円形であり、色は褐色や黒色で、盛り上がっていて、でこぼこしている場合もあります。輪郭は明瞭であり、色調は均一です。高齢者によくみられます。脂漏性角化症と言っても皮脂が漏れるわけではなく、加齢や紫外線によって角質や表皮が分厚くなってできるといわれています。

皮膚科医が皮膚がんを疑うとき

ところで爪に黒い縦筋ができることがあります。爪甲色素線条(図6)と呼びます。これはがんではありませんが、以下のいずれかに当てはまる場合は悪性黒色腫(図7)を疑います。①爪の先端と根元で黒い縦筋の色が異なる。②爪が割れたり変形したりしている。③爪のみならず爪の根元や指の先端の皮膚も黒い。④急激に黒い部分が広がっている。

ほかに爪にできる黒いものといえば、爪甲下血腫(図8)があります。外傷や激しい運動の後にできることがあります。一見黒くても、よくみると紫色や赤紫色に見えるところがあるのが特徴です。何か月か経つと爪が伸びるとともに黒い部分が爪の先端側へ押し出されていきます。 また、爪白癬(爪の水虫、図9)でも爪が黒くなることがあり、とても紛らわしいです。

まだまだ皮膚の病気はたくさんありますので、他の皮膚がんについてはまたの機会にお伝えいたします。

皮膚科医が皮膚がんを疑うとき

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