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病気のはなし

ICD、CRT-Dの話

循環器内科 伊藤 敦彦
(緑のひろば 2013年2月号掲載)


最近の医療は循環器領域もそうですが、英文字略語が増えました。今回のICD、CRT-Dも近年の治療・機器の略語です。ICD(Implantable Cardioverter Defibrillator)は「植え込み型除細動器」の略であり、CRT(Cardiac Resynchronization Therapy)は「心臓再同期療法」のことを言います。CRTは両心室ペースメーカーを用いて行いますが、これに「除細動機能」が付いたものが、CRT-Dです。DはDefibrillatorの意味で、CRTとICDの合体したものです。

1.ICD
 ICDは心臓突然死を予防する機器です。心臓突然死を予防するには、お薬での予防方法もありますが、いろいろな論文報告からも植え込み型除細動器に勝るものはありません。心筋梗塞や心筋症といった心臓の壁運動に異常のある患者さんに発生する不整脈の予防のために植え込むことが多いですが、壁運動に異常がなくても、先天性QT延長症候群やBrugada(ブルガダ)症候群、原因がはっきりせず心室細動を起こすようなケースなどにも使用します。AEDはおなじみなってきましたが、それと同じように機械が自動的に不整脈を判断して、電気ショックを落とします。簡単に言うと、体内型AEDのようなものです。しかし、ICDは電気ショックだけでなく、心室頻拍などの頻脈性不整脈には、より速い電気刺激でペーシングして不整脈を止めたり(オーバードライブという)、脈が異常に遅くなる徐脈性不整脈のときに使用する一般的なペースメーカーの役割も持ち合わせています。

2.CRT、CRT-D
CRTは両心室ペースメーカーを用いて、心不全の治療をすることです。通常は心電図で、完全左脚ブロックという所見がみられ、左心室各部位の壁収縮のタイミングがずれて、波打つような動きとなり、収縮効率が落ちて、心不全を起こす場合に行います。通常のペースメーカーは、(心房は別として)、右心室だけにリード線を入れるのが一般的で、単心室ペースメーカーという形になります。CRTは両心室ペースメーカーと言うように、右心室側と左心室側にペーシングリード入れて、ほぼ同時にペーシングをし、左心室各壁の収縮のタイミングが同時になるように、収縮のずれを修正します。左心室側のリード線は冠状静脈というところへ逆行性に入れていき、左心室側壁部に留置します。左心室の心室中隔(右心室側)とその反対側が同時に興奮する形になり、左心室の収縮効率を上げます。このように、左心室の各壁運動の収縮のずれを調整し、再同期させることから、CRTとよばれます。心不全になる患者さんは、心室性不整脈が多くみられますが、壁運動(心機能)の悪いの患者さんでは、心臓突然死を起こす比率も高いと言われています。心臓の動きの悪いケースは、大規模試験でも心臓死のリスクは高く、1次予防的(今まで起こしていなくても)に除細動器の必要性が出てきます。両心室ペースメーカーでの心不全治療だけでなく、心室性不整脈による心臓死のリスクも下げるべく、CRTとICDの両方の機能を持ったものが必要になり、これがCRT-Dです。

 ICDの歴史は約30年ですが、初期のICDは大きく外科的に開胸して心臓に電気ショック用パッチをはり、大きな本体を腹部に置いたものです。最近のICD、CRT-Dはコンパクトで、通常のペースメーカーと同様に局所麻酔での手術となりました(図1)。

また、不整脈診断も機器の改良により、誤作動も激減しました(図2)。誤作動が起こると、意識下で電気ショックが落ちますので、患者さんには多大な不安を与えます。鬱になる方が多かったですが、現在は減少しています。

さらに、ホームモニタリングという、不整脈を常に監視し、そのデータを転送してくるシステムも進んでいます(図3)。ペースメーカーと同様にMRIなど磁場の近くは行けません。また、運転免許は、一部可ですが基本的には不可です。一度致死的不整脈を起こした2次予防だけでなく、起こしそうな1次予防にも植え込むようになりました。とは言え、欧米人とは違い、まだまだ日本人的には、このような重症な病気や機器を植え込むことをスムーズに受け入れるは難しいのが現状です。欧米人は言います“日本の病気と欧米の病気は違うのか?”と。It is not the different disease but the different culture.でしょうか。


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