病気のはなし
その症状、「鼠径(そけい)ヘルニア」かもしれません
こんな症状はありませんか?
・立った時に足の付け根にふくらみがある
・横になったり、手で押さえると引っ込む
・足の付け根や下腹部に違和感・不快感がある
それは「鼠径(そけい)ヘルニア」の可能性があります。
「鼠経(そけい)ヘルニア」とは?
一般的に「脱腸(だっちょう)」と呼ばれている良性の病気です。ヘルニアとは、何かの組織が飛び出ている状態のことを指します。「鼠経(そけい)ヘルニア」とは、加齢などが原因で筋肉が弱くなって、鼠径部(足の付け根)の元々弱い部分から腸などが飛び出してくる病気なのです。
日本では年間16万人の方が手術を受けており、決して珍しい病気ではありません。
当科では毎月10人程度の方が手術を受けられています。
※「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」は整形外科で治療する全く別の病気です。
「鼠経(そけい)ヘルニア」はおなかの病気、「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」は背中の病気です。
もし放っておくと…?
成人の「鼠経(そけい)ヘルニア」が自然に治ることはありません。
放っておくと穴は次第に大きくなり、たくさんの腸が飛び出すようになります。
また、腸が飛び出したままおなかの中に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」と呼ばれる状態になると、突然激しくおなかが痛くなります。首を絞められたような状態になっており、このままでは腸が腐ってしまい命に関わるため、緊急の手術が必要になります。
「鼠経(そけい)ヘルニア」の治療法は?
手術が唯一の方法です。
「鼠経(そけい)ヘルニア」を薬や筋力トレーニングで治すことはできません。
手術では、鼠径部の筋肉のつなぎ目に開いた穴をポリプロピレン製のメッシュで補強して、腸が飛び出さないようにします。
手術の方法は大きく分けて2通りあり、腹腔鏡を使っておなかの中から手術をする方法と、鼠径部を切開しておなかの外から手術する方法があります。患者さんの状況に合わせて最適な方法を選択しますが、いくつかの長所があるため、当院では腹腔鏡による手術に特に力を入れています。
腹腔鏡手術について
腹腔鏡手術は3か所の小さな傷で行います。傷が小さいため手術後の痛みが比較的少なく、術後の回復が早くなります。時間が経てば傷痕はほとんど消えて分からなくなってしまい、違和感なども残らないことから、手術をしたことも忘れてしまう患者さんもいらっしゃいます。 また、症状が出にくい初期のヘルニアでも腹腔鏡で確実な診断ができること、右と左の両側にヘルニアがある場合にも同じ傷から一度の手術で修復可能なことも、腹腔鏡手術の長所です。
短所は全身麻酔が必要となることが挙げられます。全身麻酔が望ましくない方や、過去におなかの手術をされたことのある方は腹腔鏡手術が適応にならない場合がありますので、ご相談下さい。
手術時間は1時間前後です。
手術の難易度や両側治療の有無により手術時間は前後する可能性があります。
術後3時間ほどで歩行や飲水が可能となります。
基本的には手術の前日に入院し、翌日が手術となります。術後1~3日での退院が可能です。
最適な治療法は患者さんの病状によって異なる可能性があります。「安全」「確実」で、「体への負担が少ない」治療を心がけておりますので、気になる症状がある方はどうぞお気軽にご相談下さい。
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