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病気のはなし

全身МRIのお話

2024年9月

部長 南部 敦史

MRI検査を受けたことはありますか?ご本人は経験なくても、ご家族・親戚や知り合いの方には何人もMRI検査の経験者がいらっしゃるのではないでしょうか? MRIは今やほとんどの診療科で必要不可欠な検査となり、超音波、CTとともに画像診断の中心的役割を果たす検査となっています。今回はその中で最近注目を浴びている全身MRIについてご紹介致します。

MRIは通常は、特定の部位を詳しく調べるために体の1部分のみ撮像しますが、全身MRIでは主に腫瘍の有無を調べるために全身の撮像が行われます。病変を効率良く検出するためには「拡散強調像」という撮像法が必要になります。  
“拡散現象”という言葉はお聞きになったことがあると思います。水の入ったビーカーに墨汁を一滴垂らすと、何も力を加えなくても水分子のブラウン運動により墨汁は薄まっていきます。これが拡散現象で、組織の拡散の程度を画像で表示する撮像法が「拡散強調像」です。拡散強調像では、腫瘍組織は正常組織より細胞がより大きく、より密に固まり状に存在しているので水分子の拡散現象が制限されるため、高信号を示すのです(通常、全身MRIでは高信号部分を黒く表示します)。
拡散強調像自体は30年以上前から、主に頭部で新しい脳梗塞の診断に用いられていましたが、当時は体幹部では呼吸による動きなどにより画像が乱れるため、病気の診断に使えるようなきれいな画像を得ることができませんでした。その後、様々な技術が開発され、体幹部でも拡散強調像が応用できるようになりました。全身MRIは放射線科医である高原太郎氏により2004年に報告された(Takahara T, et al. Radiat Med. 2004;22:275-82.)、消化管の信号を抑えるなどいくつかの撮像の工夫により、あたかもPET検査のような全身拡散強調像を得ることができる検査で、「DWIBS(diffusion weighted imaging with background signal suppression」と命名されました(「ドゥイブス」と読みます)。

一方、PET検査(ここでは臨床で最も用いられているFDG-PETを指すこととします)は全身MRIに比べると歴史は長く、今やがんの診療には必要不可欠な重要な検査となっています(関東中央病院にはPET検査装置はなく、他施設に紹介し、検査を受けていただいています)。今、日本人の2人に1人はがんにかかると言われていますので、知り合いやご家族でPET検査ご経験の方もいらっしゃるかもしれません。全身MRIはPETと比べると、歴史は浅いですが、最近ではPETと遜色のない診断能を有するとのデータも出始めています。
しかし、PETと全身MRIは、画像は似ていても評価しているものが全く異なります。PETは細胞の糖代謝を見ているのに対して、全身MRIでは前述の通り水分子の拡散現象です。両者を比較した場合に、全身MRIがPETに劣る点は、撮像に伴う病気の様にみえる偽像(アーチファクト)が多いこと、リンパ節転移の有無の評価には向ないこと、MRIを受けられない患者さんには施行できないことなどが挙がります。
一方、全身MRIがPETより優れる点は放射線被ばくを伴わないこと、注射をする必要がないこと、PET検査を受けられない高血糖の方でも検査可能なこと、検査時間が短いこと(30分ほど)、費用が安いこと、PETでは検出できないがんを検出できる場合があることなどが挙がります。また、PETや全身MRIよりもCTの方が病気の評価に優れる場合もあります。従って、各患者さんの状態や病気の状態によって各検査を使い分ける必要があります。

当院診療放射線科では、以前から積極的に全身MRI検査に力を入れて取り組んでおり、診療に役立てています。もし、全身MRI検査にご興味があればお気軽に主治医の先生や診療放射線科にご相談ください。

※当院放射線科を直接受診して全身MRI検査を受けることはできません。当院の他の診療科の医師からの検査依頼,もしくは近隣施設の先生方からの紹介で検査を受けることができます。

全身МRIのお話 前立腺がん患者さんの全身MRI 全身の骨への多数の転移が高信号域として(黒く)描出されている

全身МRIのお話 MAGNETOM Skyra Fit シーメンス社製

全身МRIのお話 Ingenia Elition フィリップス社製

詳しくはこちらの診療科にて

放射線科

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