ピンアイコンアクセス

MENU

TELアイコンTEL ピンアイコンアクセス ご寄附のお願い 採用アイコン採用情報 検索アイコン便利ナビ

便利ナビ

心房細動に対する新たな治療(パルスフィールドアブレーション)開始のお知らせ

最新のアブレーション(パルスフィールドアブレーション)についてご紹介します

はじめに

不整脈には脈が速くなる頻脈性不整脈と、脈が遅くなる徐脈性不整脈があります。頻脈性不整脈にはさまざまな種類があり、カテーテル・アブレーションというカテーテル手術が有効な不整脈があります。中でも最も多いのは心房細動です。ここでは心房細動を主に取り上げ、当院のカテーテル・アブレーションについてご紹介します。

心房細動は心房で400回/分以上の電気信号が発生し、心拍が不規則になる特徴がある不整脈です。心房細動は脳梗塞や心不全、認知症の危険因子になる不整脈で、自覚症状がない場合でも長期的には生命予後にも影響する不整脈です。そのため、早期発見、早期介入がとても大事です。近年心房細動は増加傾向にあり、現在約70万人以上の心房細動の患者さんがいると推定されており、40歳以上の人口の1.6%程度とする報告もありますので、実は身近に存在する不整脈なのです。

治療には薬物療法カテーテル・アブレーションがあります。詳細は病気の話「心房細動の治療についてお話しします」をご参照ください。不整脈を根治するために行う治療がカテーテル・アブレーションです。

カテーテル・アブレーションとは  ~不整脈の根治を目指す治療~

カテーテル・アブレーション(心筋焼灼術)はリズムコントロール(心拍を正常にする治療方法)の1つで、心房細動の根治が見込める治療方法です。カテーテルと呼ばれる器具を使用して不整脈の原因となっている組織に熱エネルギーなどを加えて不整脈が起こらないようにする治療を言います。当院では高周波によるアブレーションを行ってまいりました。高周波は汎用性の高いスタンダードな方法として、心房細動以外の不整脈の治療にも広く使われている方法です。これはカテーテルの先端から高周波を発出し、カテーテルが接着している組織の温度が上昇し、標的組織を焼灼する方法です。焼灼された心筋細胞は壊死し、数ヶ月を経て線維組織に置き換わります(図1)。心房細動の原因の90%以上が肺静脈起源(肺から血液を戻す血管)とされており、どのような心房細動の患者さんでもまずは肺静脈が標的となります。肺静脈周囲を焼灼し肺静脈からの電気信号が心臓に伝播しないようにする、つまり肺静脈を電気的に隔離するという意味で「肺静脈隔離術」と名前がついています。詳しくは「当院のカテーテルアブレーションについてご紹介します」をご覧ください。

Created in BioRender. Matsubara, T. (2025)
https://BioRender.com/tib9a22

パルスフィールドアブレーションとは

今回新たに導入されたパルスフィールドアブレーション(PFA)は高周波とは全く異なるメカニズムで肺静脈隔離術を行います。PFAはカテーテルで電界(パルスフィールド)を発生させ、標的の細胞膜に微小な穴を開けて細胞の機能を停止させ細胞を死滅(壊死)させることで不整脈を生じなくします(Pacing and Clinical Electrophysiology, 2025; 00:1–11)。ミクロの世界での話なので、心臓に大きな穴が開くわけではありません。パルスフィールドをかけた領域のみ心筋細胞が壊死し、周辺組織へのダメージが極めておきにくいことが特徴です(図2)。

Created in BioRender. Matsubara, T. (2025)
https://BioRender.com/3uolc4i

パルスフィールドアブレーションの特徴 ~手技時間の短縮と安全性の向上~

当院で使用するカテーテルはリング状の電極がついたもので、この電極間でパルスフィールドを発生させます。肺静脈は通常上下左右あり合計4本あります。各々についてパルスフィールドをかけて治療します(図3)。肺静脈内の電気信号が心臓に伝播しなくなったことを確認して治療終了です。従来の高周波を用いた治療に比べてPFAでは手術時間が短縮すると報告されています(Circulation: Arrhythmia and ElectrophysiologyVolume 16, Issue 3, March 2023; Page e011780)。手技時間が短くなれば、麻酔時間も短縮することができ、身体への負担を軽減できます。

パルスフィールドアブレーションの最大の利点として、合併症のリスクを高周波よりも軽減できる可能性が挙げられます。従来の高周波では周辺臓器へ熱が伝播し、非常に少ないながらも周辺臓器の重篤な合併症が発生する可能性がありました。PFAではこのような周囲臓器の合併症のリスクが大きく軽減され安全性が高い治療法として注目されています(図4)。最新の知見ではPFAにおける重篤な合併症は1%未満で、周辺臓器への永続的な障害の発生はなかったと報告されています(Circulation: Arrhythmia and ElectrophysiologyVolume 16, Issue 3, March 2023; Page e011780)

治療成功率については従来の高周波と同等とされており、発作性心房細動の患者さんでは1年後の非再発率は70%程度とされています(NEJM 2023;389:123-135)。治療成績は更に向上していくことが期待されています。

Created in BioRender. Matsubara, T. (2025)
https://BioRender.com/ek388bh

どんな施設で可能な治療法なのか

PFAは有効性が高く、手技時間が短縮でき、さらに合併症のリスクを軽減できる治療であることがお分かりいただけたかと思います。

ただしPFAはどこでもできる治療ではなく、施設基準が設けられており、この基準をクリアした施設でのみ行うことが可能です。安全面の観点からは十分な経験がある施設であること、緊急心臓血管手術が可能な施設であることが最も推奨される条件とされています。

当院はそれらの条件を満たした施設の一つで、2025年11月からパルスフィールドアブレーションを開始しました。心房細動と言われ治療を検討されておられるなら、是非当院での治療をご検討ください