肥満・減量外科外来
高度肥満症に対する外科手術
はじめに
肥満症は糖尿病をはじめとするさまざまな合併症を引き起こす疾患です。
特に高度肥満症患者さんは、合併症により、平均寿命が明らかに短いことがわかっています。
肥満症に対してはまず内科的治療が試みられますが、高度肥満症患者さんにおいてはリバウンドしてしまい、残念ながらあまり改善効果が得られないことが多いのが現状です。
そのような治療に難渋する高度肥満症患者さんに対する選択肢として、肥満外科手術があります。肥満外科手術は1980年代初めにわが国に導入されて以降、手術件数は限られていましたが、近年、腹腔鏡下手術が導入され、さらに2014年医療保険制度にも取り入れられ、増加傾向にあります。
肥満症に対する外科治療の有効性は内科的治療に比べて著しく高いことがわかっています。また、糖尿病などの肥満症に関連した代謝疾患に対しても有効性が高いことから、代謝改善手術 (Metabolic surgery)としても大変注目されています。
手術の対象となる患者さんの条件
肥満症に対して6ヶ月以上の内科的治療を受けても十分な効果が得られない、年齢が65歳以下、BMI※が35以上の高度肥満があり、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群のうち、いずれかの肥満関連合併症を有している方が対象となります。
上記の条件を満たしていても、患者さんのお体の状態によっては対象とならない場合もありますので、詳しくは担当医にお聞き下さい。
※BMI:Body Mass Index 体重[kg] ÷ ( 身長[m] × 身長[m] )で算出された値
BMIの算出
身長と体重を入力して「計算する」を押してください。
初診から手術までの流れ
手術がご希望であっても原則、内科診察を受けていただき、必要に応じて手術前に内科治療を行います。
最終的に当院における多職種が参加した肥満治療チームカンファレンスにて検討を行い、手術を受けていただくかを判断いたします。
手術をうける患者さんにお願いしていること
現体重からの5%以上減量
少しでも減量をすることにより内臓脂肪が減少し、手術の安全性が高くなります。
減量方法に関しては当院専門スタッフから個別にアドバイスさせていただきます。
体重日記への記載
日々の体重や食事内容を記載いただきます。
手術方法
手術は腹腔鏡を使用し、傷の小さい、体に負担の少ない方法で行います。
肥満外科手術にはさまざまな術式がありますが、当院では現状で唯一の保険適応となっている、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(下図)を行っています。これは胃をバナナ状に細長く切除して、食事摂取量を減らす術式です。
腹腔鏡手術
スリーブ状胃切除術
合併症
腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は安全性の高い手術法ですが(死亡率0.2%)、縫合不全1~2%、逆流性食道炎、通過障害などの合併症が起こることがあります。
その他にも一般的な手術で起こりうる合併症として、出血、感染、肺炎、肺梗塞、心筋梗塞等があります。
チーム医療
肥満治療においては医師のみならず、多職種の関わりが重要であると考えられています。当院でも看護師、栄養士、臨床心理士、理学療法士、薬剤師、ソーシャルワーカー、事務職員が肥満症治療チームとしてメンバーに参加しており、術前、術後を通して、患者さんのサポートをさせて頂きます。患者さんは肥満症治療チームメンバーの中心であるとお考え下さい。
肥満外科手術患者会
最後に
肥満外科手術は肥満症に対して有効性の非常に高い治療方法ですが、手術を受けていただいただけでは最大の効果は得られません。治療を成功させる為には、今までの生活そのものを変えて、規則正しい食習慣や、運動習慣を身につけて頂く必要があります。
手術は肥満治療に対するきっかけと考えて頂ければと思います。
診療日
金曜日(第1、3、5週) 午前(予約制)
担当医師
外科医員 | 叶多 寿史 |
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専門・得意分野 | 肥満・減量外科 |
資格 | 日本外科学会専門医 日本大腸肛門病学会専門医 日本消化器病学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 マンモグラフィ健診精度管理中央委員会読影認定医 |
お問い合わせ
外科外来
TEL:03-3429-1171(内線 3006)
肥満・減量外科外来 受診希望とお伝え下さい。
その際にいくつかのご質問をさせていただきます。
(質問事項: 年齢、身長、体重、内科受診歴 等)
上記の手術条件にあるように、手術を受けていただくためには内科治療が十分になされていることが条件になります。
受診時にまず内科治療が優先されると考えられる場合には、当院、糖尿病・内分泌内科へご紹介させていただきます。肥満症、糖尿病などで、かかりつけ医のある方は紹介状を持参いただけると、スムーズです。