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公立学校共済組合 関東中央病院

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病気のはなし

最近の薬の話。
薬が多くなる循環器系疾患(後編)

前編はこちら

循環器内科 部長 伊藤 敦彦

3.心不全の薬
大切なこと:今の状態の改善と再増悪・再入院の予防

 心不全治療の変遷は最近も変わりつつあり、まだまだ進化しております。最近もイバブラジン、サクビトリルバルサルタン、ベルイシグアートと新薬がでてきました。
 心不全は病態名で病名ではありません。基本となる疾患をまず治療します。心筋梗塞による心不全なら、すべてのケースでできるわけではありませんが、冠動脈の狭窄をカテーテル治療(PCI)や手術(CABG)で治療し、その上で心不全対策を考えます。  急性期、一番よく使われるのは注射で投与するループ利尿薬です。しかし、腎機能に負担をかけます。慢性期に腎機能が悪くなると予後は悪くなります。そこで、無くすことは難しいですが、なるべく減らして使うようにしています。そのためにトルバプタンという薬を併用することが多くなりました。
 一度落ち着いても繰り返し起こし、だんだん状態が悪くなるのが心不全です。進行癌の悪くなっていくだけとは違い、急な悪化~改善を繰り返します。しかし、繰り返しながら、少しずつ悪くなります。落ち着くことはあっても、基本は治りません。その認識は、特にご家族にとって重要かと思われます。繰り返しをなるべく減らすために、検討・研究がなされ、心・腎ホルモン関連や自律神経に対しての薬剤を使用するようになりました。ACE阻害薬/ARB、β遮断薬を絶対的に導入します。加えてMRA、そして最近ではSGLT2阻害薬を考えます。長年レニベース(ACE阻害薬)のデータにとって代わるものはありませんでしたが、最近では、それに勝るサクビトリル/バルサルタンのデータが出て、この薬剤を使用することが増えました。

4.抗血栓薬(血をさらさらにする薬)
梗塞と出血の天秤

 抗血小板剤は動脈硬化性に、抗凝固薬は血液の流れの遅い静脈系や心房細動の血栓予防に使います。抗血小板剤は狭心症、心筋梗塞はじめ動脈硬化で狭窄する病気、ステント治療の血栓予防に使います。特にステント治療では植え込み後、2剤使用します。また、心房細動に対しては抗血小板剤でなく抗凝固薬を使用します。そのため、ステント治療と心房細動では一時3剤使用することもあります。最近では、高齢者の血栓予防とともに出血リスクの増加が問題になっています。高齢フレイルの問題はここにも影響します。冠動脈ステント治療も日常茶飯事に行われるようになりましたが、ステントの素材や質も向上し、2剤の期間をかなり短くするデータや、一定期間後ですが、抗血小板剤2剤を1剤にとか、心房細動例では抗凝固薬1剤のデータもでていますが、最後は患者さんの状況にあわせて考えるのがやはり基本です。
 抗凝固薬はワルファリンが主流でしたが、心房細動や下肢静脈血栓などではDOACが使われるようになり、毎回の採血は必要なく、納豆を食べてもよくなりました。DOACに分類される薬は腎機能・年齢・体重により量が決まります。便利な薬ですが、ワルファリンのときのPT INRのような指標はなく、超高齢者の方々の大規模試験はありません。

 薬は多すぎてもよいとは言えません。副作用チェック、フレイルなど、その患者さんの状況も大切です。ご本人としては、必要性や危険性をしっかり踏まえて飲むことが大切です。世間話で仲の良い他人がいろいろ言っても他人と本人は違います。自分にとって必要なことは何か?薬剤は、処方医とも話ながら考えて飲むようにしましょう。

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