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心の健康チェック事業

ストレスチェックの意義について

関東中央病院 メンタルヘルスセンター長
松浪克文

現代のストレス社会では、ストレスによるメンタル不調に早く気づき早めに対処して身(精神)を守る、ということが必要です。ストレスチェックは、ストレス状況にある多くの共済組合員に早めに予防措置を講じ、あるいは必要な場合には進んで早期治療を受けていただくことを目的としています。また、そのような事例の蓄積から、共済組合員のストレスの性質、ストレス状況の特徴を把握して、職場環境の改善につなげることも期待されています。

1.自分が他人よりひどいストレスを受けているのかどうかは、自分ではわからない。

よく、自分のことは自分がいちばん知っている、という言葉を耳にしますが、実は、自分がどれほどのストレス状態にあるかを自覚することはなかなか難しいものです。ストレス因はひとつとは限りませんし、また不快だと感じるものばかりではなく、ご本人にとっては快適な事柄がストレス因となっているケースもあります。また、自分のストレス状況が他人のものより、ひどいものなのかどうか、ということは自分ではわからないものです。多くの場合、「ほかの人も、これくらいのストレスを被って我慢しているのではないか」と考えて我慢しようとしたり、まして、カウンセリングを受けたり医師に相談したりするほどのストレスがあると主張することはなかなかできない、と感じている教職員も多いと思います。

2.ストレス性のメンタルヘルス不調に罹患しているかどうか、自分ではわからない。

ストレス過剰のために生じる不眠、食欲低下あるいは過食、イライラする、何か憂鬱であるなどの感情状態の変化、倦怠感、意欲の低下の精神身体的変調が生じます。さらには、ストレスを解消しようとして、飲酒量の増加、賭け事への熱中などの行動が誘発されます。多くの場合、「生きていればそういうこともある」と考えられ、事実、人生にはそのようなつらい時期があると解釈してなんとか乗り越えるケースも多いことと思います。しかし、それらの変調や逸脱行動も、本来の職務に支障がなく、本人らしさを損なわない程度ならよいのですが、精神医学的に「重度ストレス反応」「軽いうつ病」と診断されうる状態にさしかかると、ご本人や周囲の人の予想できなかった事態に変化していくことが少なくありません。
とくに、「うつ病」に罹患すると、予想外の変化が体と心に起こります。そして、多くの方が誤解していることですが、「うつ病」における身心の変化は、いかに経験豊富な方でも、理解し、対処法を考えだしたりはできない性質のものです。

3.気づいたときには遅い。

「重度ストレス反応」や「うつ病」へと変化していく過程は、始まってしまうとどのようにしても引き戻せない、という性質をもっています。つまり、この頃どうも変だ、と考え始めた段階には、もう、自力で問題を解消していく余力は残っていないことが多いのです。メンタルヘルス不調による休職者は、年間5000人おられ、また、病気休暇の方も含めると15000人に膨らむという試算が物語っているように、不調を自覚した段階で精神科、心療内科を受診した方々は仕事を休むことになるケースが多いのもそのためです。
是非、ストレスが蓄積してきても、まだ、その状況を改善する余力が残っている間に、専門家の助言を得て対処することが必要です。

4.心身が健康であることは、教育に携わる者に対する倫理的要請である。

昨今、病院に勤める医療スタッフは100%近い健康診断受診率を維持しており、治療に取り組む医療スタッフがまず健康であることが求められています。このことは、医療スタッフが自信をもって治療や助言を行うためには、まず自身が健康であり、健康維持のために必要なことを自ら実践していることを証明すべきだという社会的要請に応える、という意味があるものと思われます。これと同様に、学校の先生方もご自身が精神的に健康であることを確認したうえで、自分の感じること、考えることが「適応的」で「妥当」であることに信を置いて、生徒の教育、指導に当たることが求められているのではないでしょうか。また、生徒も保護者もそのような先生方の健康を期待しておられることでしょう。こう考えてくると、ストレスチェックを受けて自分の健康状態をチェックし、ストレスが高ければ指導面接を受けて是正する、という努力を続けていることは教育に携わる先生方への社会からの倫理的要請である、ということができるでしょう。