ピンアイコンアクセス

MENU

TELアイコンTEL ピンアイコンアクセス ご寄附のお願い 採用アイコン採用情報 検索アイコン便利ナビ

便利ナビ

病気のはなし

早期胃癌の発見の大切さとヘリコバクターピロリについて

2021年12月

高畑 太輔

はじめに

日本では癌で亡くなる方が死因の第1位となっています。2017年の日本の統計では、約37.6万人(27.3%)の方が癌で亡くなっており、部位別にすると多い順から、男性は①肺癌 ②胃癌 ③大腸癌 ④膵臓癌、女性は ①大腸癌 ②肺癌 ③膵臓癌 ④胃癌 です。

胃癌の発生、ヘリコバクターピロリについて

胃癌の発生原因は、昔は原因がわかっていませんでしたが、1980年代後半に「ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)」の慢性感染が原因だということがわかりました。
第一にピロリ菌、次が食塩で、以下喫煙、アルコール、ストレス、暴飲暴食、刺激物なども因子と言われています。胃癌が日本人に大変多かったことは良く知られているのですが、以前には食生活での塩分摂取過多、焦げた魚を好んで食べることに原因があると言われてきました。 もちろんそれも大きな原因なのですが、近年では特に、ピロリ菌が胃癌の大きなリスクであることが知られてきました。ピロリ菌の感染率は年齢によって大きく違い、40歳以上の人は感染率が高く、40歳以下の人は低いと言われ、特に中学生の感染率は10%以下と言われています。これには衛生環境が大きく影響していて、井戸水、家族内感染や水洗トイレが普及してピロリ菌の感染率が低くなったというデータもあります。実際に、日本人の高齢者はピロリ菌に感染している人が多く、50歳以上の方に関しては70%以上が感染していると言われています。ピロリ菌は抵抗力が弱い幼児期に感染するのが特徴で、何十年も胃の中に居続けて慢性萎縮性胃炎を引き起こし、最終的には潰瘍や癌をつくります。つまり、ピロリ菌に感染しておらず、慢性萎縮性胃炎がない人は、胃癌になることは少ないと言えます。
また、喫煙の胃癌発生リスクは非喫煙者の1.6倍と言われていますが、ピロリ菌感染者の胃癌発生リスクは非感染者の約5倍とも言われ、タバコよりはるかに高いリスクです。 これまで胃癌になった方の99%はピロリ菌に感染していたというデータがあり、一方ピロリ菌陰性の方の胃癌発生率は1%以下であったとのデータもありますので、ピロリ菌を積極的に除菌することで、胃癌の発生をかなりの確率で抑えることができると考えられます。

ピロリ菌治療について

ピロリ菌の治療(ピロリ除菌)は比較的簡単に除菌することができます。具体的には抗生物質を中心にした薬を7日間服用することで8割を駆除できます。ただ、除菌しても胃癌にならないわけではありませんので、定期的に胃カメラ検査は受けて頂く必要があります。

ABC検診と胃カメラについて

まず、胃癌になりやすい人を見つけるには、ピロリ菌に感染している人や慢性萎縮性胃炎がある人を見つけ、胃カメラの検査を行うことが有効です。一般的な市民検診で行われる「ABC検診」は、ピロリ菌に感染している疑いがあるかどうか、つまり慢性萎縮性胃炎がありそうなのかどうかを判断する血液検査になります。この検査で陽性の人に絞って胃カメラ検査を行えば、胃癌を早期発見できる可能性が高まります。胃カメラでなくバリウム検査でもいいのではと思う方がおられるかもしれませんが、ぜひ知っておいていただきたいのは、バリウム検査は死角が多いため胃の2/3ほどしか確認できないということです。そのため早期胃癌(内視鏡で切除可能な病変)を見つけるのが困難で、進行がんでさえ見逃してしまうケースもあるのです。ですから胃カメラによる検査が望ましいのですが、喉の奥を刺激されて起こる嘔吐反射の辛さに抵抗を感じ、胃カメラを敬遠される方も少なくありません。そのような方に適しているのが経鼻内視鏡検査です。鼻からスコープを入れるため、舌に当たったり喉の奥に刺激を与えたりすることはありませんし、検査中に医師と会話ができるので、最初は緊張している患者さんも次第にリラックスしていきます。また、鼻専用のカメラですから、直径約6㎜以下と細く、鼻からに抵抗がある方は、同カメラを用いて経口での検査も可能となっております。
日本の衛生環境の良さから胃癌はこれから減少していくでしょうが、今はまだピロリ菌に感染している可能性がある人も多いので、検査を受けることをおすすめします。

早期胃癌について

胃癌は通常管腔の内側の胃の粘膜から発生するものですが、早期胃癌とは広くは、胃壁(粘膜内)にとどまる浅い癌を指します。消化管全体(食道、胃、大腸)に言える事ですが、浅い粘膜内の病変で、大きさや組織型という顕微鏡での癌の型が適応範囲であれば、内視鏡(胃カメラ)による治療が可能となります。

内視鏡治療について

本邦では、従来行われていたスネアを用いた治療である内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection:EMR)からより広い病変を確実に切除するために2000年頃、早期胃がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection: ESD)という切除方法が開発され、広く普及してきました。現在では切除技術は安定化し、病変の存在する部位、大きさ、病変部の潰瘍の合併の有無にかかわらず、ほとんどの病変に対して安全に一括切除を行うことが可能となりました。
当院でも内視鏡総件数は1万件前後と数多くの方の検査治療に携わっております。また、ESD治療に関しては年間200例以上の治療成績を持ち、積極的に内視鏡検査および治療を行なっておりますので、検査・治療はもちろん、その後の治療に関しても安心して任せていただければと思います。

最後に

繰り返しにはなりますが、バリウムによる胃透視検査ではピロリ菌感染の有無や、早期胃癌もなかなか発見できません。ですから胃癌検診は透視ではなく、初めから胃カメラを選んで頂くと、検査も一度ですみますので心配であればご相談頂ければと思います。 以上のように胃癌は、ピロリ菌除菌などによる予防と早期発見による内視鏡治療で、かなりの確率で克服できる癌であると言えるでしょう。是非、定期的に胃カメラを受けて頂き、無症状のうちに早期胃癌を見つけましょう。

詳しくはこちらの診療科にて

消化管内科

病気のはなし一覧に戻る