メニュー

公立学校共済組合 関東中央病院

  • フォントサイズ
  • 小
  • 中
  • 大

病気のはなし

高齢者の「せぼね」の骨折(あっぱく骨折)

整形外科部長 村上 元昭

ちょっとしたことで骨折します

 ものを取ろうと手を伸ばした、くしゃみをした、立ち上がったときにヨロっとした、買い物に行って帰ってきた、旅行に行った……。これらが何かというと、最近「せぼね」の骨折と診断された人の、骨折したきっかけと考えられたことです。日常のありふれた行動ですが、いつものように何気なくやった動作などをきっかけに骨折してしまうことがあります。「骨折していますよ。」とお伝えしても「えっ?私は骨折するようなことは何もしていませんが……」と不思議な顔をされる方もいますが、日常のなかでそのくらい簡単に骨折がおきています。
 「せぼね」はみなさんの体を支える柱です。例えば、お辞儀をした姿勢では何もしないで立っているときの1.5倍くらいの力が「せぼね」にかかります。若いときは仕事をしたりスポーツをしたりの衝撃にもたえられるくらい柱はしっかりしていますが、4~50歳をすぎるころから徐々に劣化がはじまります。そして、いつのまにかお辞儀のような軽い負担にも耐えられないくらい骨がもろくなってしまっていた(骨粗鬆症)ために骨折したのです。

骨折は痛くてつらいものです

 骨折はじっとしていてもズキズキうずいて痛みますが、これは出血や腫れといった炎症による痛みなので長くは続きませんし、痛み止めで和らぎます。
 それ以外の骨折に特徴的な痛みは「動いたときの痛み」です。「せぼね」の骨折をすると、特に寝起きをするときにとても痛みます。柱としてしっかりしているので普段は「せぼね」のことなど気にせず体を動かしていますが、柱が折れたとき(骨折)は「グラグラしていて体重を支えることができません!」と「せぼね」が悲鳴をあげます。それが痛みです。この状態は、骨がグラグラしなくなるまで、つまり骨がくっつくまで3か月くらい長い間続きます。
 手足の骨折でギプスを巻くと痛みが減り、折れているのに結構手足を動かせるようになります。「せぼね」の骨折でもギプスや装具は有効ですが、起き上がる時にはどうしても背骨に体の重みが乗っかってしまってギプスでも保護しきれず、寝起きをするときにとても痛みます。この痛みはどんな痛み止めを飲んでもあまり効き目がありません。薬が効かないといって、言われたよりも多く飲んでしまったり、長いあいだ飲み続けたために胃に穴があいて救急車で運ばれてくる人もいますので注意が必要です。

 ではどうしたらいいのか。患者さんは「動かなければ痛くないのですが……」と言います。つまり「寝たきりで過ごす」のがおすすめです。痛くなければ痛み止めを飲む必要もありません。「寝てばかりいたら動けなくなる、変なこと言わないでください!」という心配も当然ですが、痛くてもがんばって動き続けてしまったために骨折が悪化して余計に苦しくなってしまった人もいます。そこを我慢していっとき安静にすることが骨折を治す一番の早道なのです。目安は2~3週間です。
 骨折と診断されたら、どうやったら家でゆっくり寝ていられるかを急いで考えないといけません。ご家族や「あんしんすこやかセンター」に相談しましょう。自宅で過ごせない方は入院が必要です。
 折れ方によっては「寝たきり」までの安静が必要ないこともあります。また、早く痛みから解放されたいと思われる方には手術もよい治療です。

骨折は「しない」のが一番です

 当たり前のことですが、骨折して痛がっている方を診るたびに心から願うことです。特に今まで述べたような、ちょっとしたことで骨折してしまった方は、近いうちにまた骨折をする危険が高いので要注意です。「骨粗鬆症」の対策が必要と考えられますので、整形外科や内科でご相談ください。
 もう一つは転ばないことですね。転ばない体力づくりのためには、片足立ち訓練やスクワットのような運動をすることも重要です。また杖などの歩行補助具の使用や自宅の環境整備をして用心することも大事です。お近くの「あんしんすこやかセンター」などで一度ご相談になってください。

※「あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)」は、世田谷区が設置した区立の相談窓口です。
高齢者の方が住みなれた地域で、その人らしい生活が続けられるように、さまざまな支援を行っています。

詳しくはこちらの診療科にて