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病気のはなし

高齢者の誤嚥性肺炎

2022年10月

呼吸器内科部長 高見 和孝

はじめに

高齢化社会により肺炎で亡くなる人は増加しており、2011年には、がん、心臓病に次いで、肺炎は日本人の死因の第3位となりました。肺炎で亡くなる人のほとんどは、65歳以上の高齢者であり、高齢者の肺炎の多くが、『誤嚥(ごえん)性肺炎』が原因と言われています(70歳以上では70%以上、90歳以上では95%近くが誤嚥性肺炎と言われています)。当院呼吸器内科に入院した肺炎患者さんのうち、4割以上の患者さんは誤嚥性肺炎と診断されています。

誤嚥性肺炎とは

物を飲み込むことを嚥下(えんげ)と言います。嚥下すると、食べ物は口から食道、胃と入ります。嚥下の機能が低下すると、食道へ入るものが誤って気管に入ってしまい、これを誤嚥(ごえん)と呼びます。誤嚥性肺炎は、口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に誤嚥され、気管支や肺に入ることで生じる肺炎です。嚥下機能の低下した高齢者や、脳梗塞後遺症やパーキンソン病などの神経疾患(喉の神経や筋肉が正常に働かず嚥下障害を来たす)を抱えている患者や寝たきりの患者に多く発生します。口の中の細菌が原因であることが多く、口の中が清潔に保たれていないと、肺炎の原因となる細菌がより多く増殖し、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高まります。嘔吐などの際に、食物と胃液を一度に誤嚥して発症する場合もあります。これは高齢者に限った事ではありません。

高齢者の誤嚥性肺炎

症状

高齢者では肺炎としての症状、すなわち発熱、咳、痰といった肺炎の典型的な症状に乏しく、何となく元気がない、食欲がない、傾眠などといった症状で発症することが多いのが特徴です。食事摂取との関係やむせこみなどの症状がなく、睡眠中など知らないうちに気管や肺へ唾液が垂れこみ、いつの間にか誤嚥を繰り返している不顕性誤嚥も、高齢者に特徴的です。

治療・予後

肺炎を起こした細菌に対して有効な抗菌薬による治療を行います。全身状態、呼吸状態が不良な場合は入院による治療を行います。一般的に、食事や飲水とともに誤嚥が発生しやすいため、誤嚥性肺炎と診断された場合には、一旦飲食を禁止して治療を行います。そのため体力や栄養状態の低下が生じやすくなります。また再発を繰り返しやすく、繰り返す抗菌薬治療により、抗菌薬に抵抗性の耐性菌が発生し、体力の低下、呼吸状態が悪化して、予後不良となる場合も少なくありません。

予防法

抗菌薬による治療は肺炎自体には効果がありますが、誤嚥を防ぐことはできません。治療後に、繰り返し誤嚥性肺炎を発症する可能性があります。そのために誤嚥性肺炎のリスクを減らす努力が必要です。誤嚥性肺炎の予防には、以下のことを心がけて下さい。

①誤嚥のリスクを減らす
・食事の工夫(食事形態やとろみをつける等の工夫をしてみること)
・食事に集中する(会話やテレビを見ながら等の食事をしないこと)
・胃液の逆流を防ぐ(食後2時間は横にならないように気をつけること)
・嚥下リハビリ(嚥下機能の改善をはかること)

 

②感染のリスクを減らす
・口腔ケア(口の中を清潔にし、誤嚥時の細菌を少なくして肺炎の発生を減らすこと)

 

③脳血管障害の予防も大切です。

最後に

誤嚥は、高齢者には、皆起こりうる老化現象とも考えられます。いずれはご家族・ご自身に起こりうる問題です。多くの方々が、少しでも誤嚥性肺炎を理解し、考え、予防に努めていただくことを願っています。

詳しくはこちらの診療科にて

呼吸器内科

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