ピンアイコンアクセス

MENU

TELアイコンTEL ピンアイコンアクセス ご寄附のお願い 採用アイコン採用情報 検索アイコン便利ナビ

便利ナビ

病気のはなし

肥満を手術で治す

2018年7月

叶多 寿史

糖尿病に対する治療は栄養指導、運動指導からはじまり、改善がなければ、内服薬を飲んだり、インスリンの自己注射を行ったりするのが、従来から行われている内科的治療です。一方で、肥満を合併した糖尿病に対しては外科手術が有効であることをご存知でしょうか。

なぜ糖尿病が手術で治るのか、ピンと来ない方も多いと思います。今回はその方法や理由についてお話します。

まず手術の方法ですが、これは胃を縮小したり、バイパスしたりする手術です (下図)。

肥満を手術で治す スリーブ状胃切除術(左)と胃バイパス術(右)

そうすることにより、食事の摂取量や栄養の吸収量が劇的に減少します。
これは肥満手術と呼ばれるもので、欧米では古くから行われており、日本でも2014年にスリーブ状胃切除術が保険収載され、最近、増加傾向にあります。

それでは糖尿病は肥満手術の結果として、やせるから改善するのでしょうか。
実は理由はそれだけではありません。肥満手術を受けた患者さんは手術後すぐに、血糖値が下がり、大量に使用していた内服薬やインスリン注射を減らしたり、中止することができるようになることが多いのです。これは肥満手術直後で、体重が減少する前に起こる現象です。
理由として、手術による消化管ホルモンの分泌量の変化、胆汁酸の増加、腸内細菌叢の変化などが考えられていますが、実はまだ仮説の段階で、本当のところはわかっていません。いずれにしろ、糖尿病に対する肥満手術の効果は現在までに多くの研究で証明されており、そのエビデンスレベル(証拠)は非常に高いものがあります。

さて、非常に改善効果の高い肥満手術ですが、全ての糖尿病患者さんが対象となるわけではありません。前提として、糖尿病専門医による内科的治療が行われていることが必要です。また、最初にお話ししたように、「肥満」を合併した方が対象になります。具体的は、日本ではBMI 32以上の患者さんが対象になります。(保険適応は35以上)。ただ、最近になって日本を含む各国の糖尿病学会が参加して提唱された国際声明においては、軽度の肥満であっても糖尿病による合併症が生じやすい日本人を含むアジア人においてはBMI 27.5以上でも内科的治療で改善が難しければ手術を考慮してもよいと示されており、今後、日本においても対象となる患者さんが増加する可能性があります。

肥満手術で糖尿病が治りやすい患者さんはどのような方でしょうか。これも今までの研究で示されています。それは、より年齢が若くて、糖尿病の罹患歴が短く、インスリンの分泌能が保たれていて、BMIが大きい患者さんです。そのような患者さんはスリーブ状胃切除術で改善することが多いです。反対に糖尿病の罹患歴が長く、インスリン注射を大量に使用している方などは、それだけでは改善効果が乏しく、バイパス手術という、より難しい手術が必要となることがあります。手術を考える場合には上記のようにご自身の糖尿病が現在どのような状況であるのかも重要な要素です。

また、肥満がある方は糖尿病だけでなく、高血圧、高脂血症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、変形性膝関節症、等のさまざまな合併症を生じやすいです。肥満手術はそれらに対しても高い改善効果があることがわかっています。

肥満があり治療に難渋する糖尿病をはじめとしたご病気をお持ちの方は、手術という選択肢があることを知って下さい。当院では肥満減量外科外来を開設しております。手術治療に興味がある方はいつでもご相談下さい。

※1 BMI:Body Mass Index 体重[kg] ÷ (身長[m] × 身長[m])で算出された値
※2 第2回糖尿病外科サミット(Diabetes Surgery Summit;DSS-II)

詳しくはこちらの診療科にて

外科

病気のはなし一覧に戻る