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病気のはなし

心臓CT

2018年5月

杉下 靖之

狭心症、心筋梗塞という、胸が痛くなる心臓の病気は皆様もご存じのことと思います。これらの病気は、心臓の筋肉(心筋)に血液を供給する冠動脈という動脈が動脈硬化を起こすことによって生じます。動脈硬化の結果、血管内腔が狭くなり、血液を心筋に十分供給できなくなると狭心症の発作が生じます。また血管が詰まって血流が途絶えると、心筋が死んでしまい心筋梗塞という病気になります。いずれの病気も命に関わるものであり、できるだけ早期、かつ適切に診断をして治療を行うことが大切です。

この冠動脈が狭いかどうか調べる検査としては、かつては「心臓カテーテル検査」しかありませんでした(図1)。これは足の付け根あるいは手首からカテーテルという細長い管を体の中に挿入して心臓まで進め、この管を通して造影剤というX線で映る薬を冠動脈に直接注入して撮影をする検査です。現在でも冠動脈の情報を得るうえで一番正確な検査であることに変わりはありませんが、入院を必要とし、体にとって負担のかかる、ある程度の危険性も伴う検査です。したがって、あまり気軽に施行できる検査ではありません。

図1:心臓カテーテル検査室

検査中の風景。あくまで検査のみではありますが、このような検査室および状況下で実施されます。

心臓カテーテル検査に代わる冠動脈の検査として、体の断面像を撮像するCT検査が10年ほど前から冠動脈にも用いられるようになりました。「心臓CT」です。ただし、冠動脈は径が3mmほどしかなく、なおかつ心拍動とともに動いていますので、通常の撮像法では冠動脈を描出することはできません。時代とともに医療機器も進歩し、(1) 検出器を4cm幅に64列並べた多列検出器CTの開発、(2) 心電図も同時に記録して心拍動と同期させて撮像する技術、(3) 情報処理能力に優れたワークステーションの出現により、激しく動く3mmの血管もCTで描出できるようになりました。
下に一例を示します(図2)。症状等から狭心症が疑われ、心臓CTを施行しました。その結果、図に示すように冠動脈の狭窄が見られ、心臓カテーテル検査を施行したところ、心臓CTの通りの冠動脈狭窄がありました。こちらの病変に対して経皮的冠動脈ステント留置術(PCI)を施行し、以降順調な経過をたどっています。この例は特にきれいに描出された一例ですが、心臓CTは心臓カテーテル検査という負担のかかる検査をしないで冠動脈に関する情報を得ることができる非常に有用な検査といえるでしょう。

心臓CT 図2:心臓CTと心臓カテーテル検査(冠動脈造影)の画像の比較。心臓CTの場合、元の断層像をコンピューター処理することにより、解剖学的な三次元画像(A)、冠動脈造影に近い画像(B)、冠動脈内腔や動脈硬化を見やすくした画像(C)等の様々な画像を作成することができます。そしてB、Cの矢印で示す通り、冠動脈に狭窄病変が存在することが指摘されました。心臓カテーテル検査を施行すると、冠動脈造影にて心臓CTで指摘された通りの冠動脈狭窄を認めました(D:矢印)。

ただし、心臓CTは誰にでも施行できる検査 ではありません。そもそもCTという検査は動きに弱い検査ですので、動きをコントロールできないと画像を再構成できません。検査の時には心拍数を低下させる薬を内服していただきますが、それでも心拍数の速い方、あるいは脈が乱れている方はきれいな画像を作成することができません(図3)。また、心臓の位置は呼吸によっても動きますので、撮影中に10秒前後は息を止めていただく必要があります。したがって、呼吸困難があって息を止めることができない方、あるいは息止めの指示に従えない方も心臓CTを施行することはできません。

心臓CT 図3:同じ患者様の心拍数が低く抑えられたとき(左)と脈が乱れているとき(右)の画像。心拍数が低く抑えられているときれいな画像が得られますが、脈が乱れていると破線で示した部分のように画像もぶれてしまい、動脈硬化や狭窄の評価ができなくなります(モーションアーチファクト)。

上記の問題以外に、冠動脈の石灰化が強い場合にも評価ができなくなります。石灰化とは、動脈硬化が進行して骨の構成成分でもあるカルシウムが動脈壁に沈着する現象です。この石灰化が強くなるとCTの撮影に用いるX線も強く乱され、その影響が出てしまいます。その結果、冠動脈の狭窄度に関する評価ができなくなってしまいます(図4)。

心臓CT 図4:白く強く写っている部分が石灰化です。このように石灰化が強いとほかのものが全く見えなくってしまい、冠動脈の狭窄度の評価はできません。

心臓カテーテル検査でも心臓CTでも造影剤を使用します。この造影剤ですが、検査には必須の薬剤ではあるものの腎臓の悪い方、あるいは喘息のある方には使用が躊躇されます。もちろん狭心症や心筋梗塞が強く疑われて必要と判断したら造影剤を使用するのですが、それでも心臓CTと心臓カテーテル検査で繰り返し使用するとそれだけ問題が生じる危険性も高くなります。そこで、上記のような方であればあえて心臓CTは施行せず、心臓カテーテル検査のみで診断をするということもあります。

心臓CTは現在の循環器診療において非常に有益で欠かすことのできない検査ではありますが、実際に施行するうえでは様々な問題もあり、その有益性と不利益な点を事前に十分検討する必要があります。胸の痛み、締め付け感、不快感等の症状があり、狭心症や心筋梗塞が気になる方は、是非とも循環器内科を受診してください。あるいは、かかりつけの先生がいらっしゃったら、その先生と御相談ください。当院循環器内科まで御紹介いただけたら、診察のうえ心臓CT実施の可否も含めて方針を検討し、その後の各種精査、加療を進めさせていただきます。

詳しくはこちらの診療科にて

循環器内科

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