このページでは、Javascriptを使用しています

病院広報誌

緑のひろば

2018年1月号

不眠とメンタルヘルス不調について

メンタルヘルス科医長 秋久 長夫

 様々な調査で、だいたい日本人の5人に1人が不眠に悩んでいるといわれています。不眠症は高齢化やストレス過多、生活サイクルの多様化などから増加傾向にあるともいわれており、皆様の周りにも不眠で悩んでいる方が少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。不眠症は子供には稀であり、20、30歳代頃に始まって、年齢を重ねるごとに増え、40、50歳代頃になると睡眠薬を飲んでいる方が増えてくるように思います。更に60歳代以降も徐々に睡眠の質は下がってきて、「昔のように長時間続けて眠れない」とおっしゃる方が多くなります。また一言で不眠と言っても、寝付けなくて困っている(入眠困難)、寝付きは良いが夜中に目が覚めてしまう(中途覚醒)、普段より朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、眠りが浅い感じがして疲れが取れない(熟眠障害)など人により様々です。もちろん寝付きも悪いし、やっと寝付いても夜中に目が覚めてしまう(入眠困難+中途覚醒)という方もいますし、重症の場合、これらの全てに当てはまるということもあります。

 さて今回は不眠とメンタルヘルス不調の関連や特徴についてのお話です。身体の病気や、それらの治療のために飲んでいる薬の影響で不眠になることもありますが、特に原因がはっきりしない場合もあります。そこで忘れてはならないのが、メンタルヘルス不調に伴う不眠です。事実、われわれの診察室を訪れる方の殆どが不眠にもなっています。

 重度ストレス反応(適応障害)を含む心因性(「メンタル(心)を病むということ」を御参照下さい)の不調の場合はストレス状況への不安、焦燥などのため、入眠困難を認めるパターンが多いです。例えば「嫌な上司の顔が浮かんで眠れない」「失踪した息子のことを考えてしまって眠れない」などです。また眠れないこと自体への不安から、「今日も寝付けなかったらどうしよう」「今日こそはしっかり眠らねば」などと考えてしまい余計に寝付けなくなることも多いです。一方で、典型的なうつ病(内因性)の場合、入眠に問題はありませんが、早朝覚醒が問題となります。「まだ暗いうちから目が覚めてしまい、再び寝付くことができず、起床しようにも、どうにも身体が重く…」という具合です。一般に、うつ病というと眠れなくなるイメージしかないかもしれませんが、双極性感情障害(躁うつ病)のうつ状態の際は、夜も眠れるのに日中も何時間でも眠ってしまい、むしろ過眠になることがあります。反対に躁状態では、睡眠時間が極端に短縮し(睡眠欲求の減少)、夜中にゴソゴソ動き出し、部屋の模様替えや、古いアルバムの整理を始めたりもします。「24時間戦えます」と言っていた方もいて印象的でした。私がまだ研修医だった頃に躁うつ病の方を見ていて、同じ人なのに時期によって睡眠薬が全く不要であったり、大量の睡眠薬が必要になったりすることに衝撃を受けた覚えがあります。それから、統合失調症の場合も特に急性期は重度の不眠が殆どの方に認められます。

 当メンタルヘルスセンターでは主に教職員を対象としたストレスチェック(労働者のストレス状況や心身の不調をチェックするものです)も行っていますが、その際に睡眠についても併せてお尋ねしています。そこから少し見えてきたことがあります。ストレスが高いと判定された方(高ストレス者)のうち、不眠になっている方は10人に1人くらいでしたが、反対に不眠の方についてみると、実に半分以上の方が高ストレス者でした。この結果からも不眠とストレス状況ひいてはメンタルヘルス不調が密接に関わっていることは明らかです。不眠が気になっていて、何らかのストレスや心配事を抱えている方は、一度、メンタルヘルスの専門医に御相談頂くと良いと思います。

【関連】
病気のはなし メンタル(心)を病むということ


診療科のご案内



交通のご案内

今月の担当医

休診情報

公立学校共済組合の皆さんへ


採用情報

看護部Webサイト

ボランティアについて

行事・イベント

病院広報誌 緑のひろば

日本医療機能評価機構認定病院

厚生労働省臨床研修指定病院

このページのトップへ