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病院広報誌

緑のひろば

2017年2月号

頚動脈狭窄症

脳神経外科 岡村 耕一

食生活の欧米化とともに、脂質異常症や糖尿病などが増え、もともと塩分摂取の多い日本人が持ちあわせている高血圧に加わり、日本人の生活習慣病は増加傾向にあります。生活習慣病に長く晒(さら)されていると、血管は動脈硬化に陥(おちい)ります。すると、人知れず「頚動脈狭窄症」になっていることがあります。今回は、重篤な脳梗塞の原因となり得る頚動脈狭窄症についてお伝えします。

長い間、脂質異常症や糖尿病、高血圧に血管の内腔が晒されると、血管のしなやかさが失われ(動脈硬化)、血管内壁に粥腫(プラーク)がたまります。プラークの量が増すと、血流が細くなり、ついには途絶えてしまいます。冠動脈(心臓の周りの血管)狭窄により心筋梗塞が起こり得るのと同様、頚動脈狭窄症は脳梗塞を発生させます。柔術などで頚動脈を押さえると意識が飛んでしまうことからお分かりと思いますが、頚動脈の血流が少なくなれば脳に血流を送れなくなり、脳が死滅します。これが脳梗塞です。 さきほど心筋梗塞が起こり得る機序と同様と書きましたが、頚動脈狭窄症が原因で脳梗塞を起こす理由がもう一つあります。それはプラークが非常に柔らかいときです。プラークは柔らかい場合から硬い場合まで人により様々なのですが、柔らかいプラークを持ち合わせた場合に、なんらかの拍子にプラークが剥がれ、血流に乗って脳までプラークが流れ着いた場合に、脳血管にプラークが詰まり、脳に血流がいかなくなります。この場合、前触れもなく突然脳梗塞が起こるので、非常に危険です。  それでは、頚動脈狭窄症はどうしたら未然に見つけることができるのでしょうか。大抵は救急車で運ばれる状況になるまで分かりません。

失語(言葉が出てこない)、麻痺や意識混濁におちいり、救急車で搬送されます。精査にて脳梗塞が認められると、治療が始まります。そこでやっと、頚動脈狭窄症が判明するのです。脳梗塞を起こしてはじめて、その原因は頚動脈狭窄症(プラーク)であり、更に、プラークは以前からあったことが分かるのです。

頚動脈狭窄症は生活習慣病が原因です。高血圧や糖尿病、脂質異常症があり、近くのクリニックなどに通われている方、頚動脈超音波検査(エコー)をされたことはあるでしょうか? 生活習慣病は無いよ、という方がエコーをするには、脳ドックのオプションなどで行なうしかありません。頚動脈狭窄症は、日本人に多い生活習慣病が原因でなる病気であるのに、エコーの機会が日本人には少ないのです。頚動脈エコーでは、頚動脈の狭窄程度や動脈硬化の有無が分かります。

動脈硬化があった場合、それが悪化すると頚動脈狭窄症に陥る可能性があります。頚動脈に動脈硬化が見られる方は、頚動脈狭窄症にならないためにも、生活習慣病の治療が必要です。動脈硬化自体は、お薬で治るものではありません。これ以上の悪化を予防するために、生活習慣病の治療が必要になるのです。それを放っておくと、頚動脈狭窄症にまで悪化し、手術治療が必要となるかもしれません。脳梗塞を発症して、頚動脈狭窄症が原因である場合には手術が必要です。また、脳梗塞はないけれども、狭窄率が高度である場合(血管が極めて細くなっている場合)には手術が必要であることがあります。脅かす訳ではありませんが、生活習慣病で治療をされている方、一度かかりつけ医と相談されてみてはいかがでしょうか。


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