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病院広報誌

緑のひろば

2011年12号

隠れていた脳梗塞

脳神経外科 吉本 智信


2、3日でなおった手のしびれ
 今までは健康に気を使ったことはありませんでした。何かあっても仕事をしているうちに何とかなると思っていましたし、事実そうでした。一ヶ月ほど前、朝おきた時に何となく手がしびれていました。何日かたつうちになおってしまい、また出張が入っていた為、特に気にしませんでした。ところが、親戚の同年代の人が会議中に急に強い頭痛がおこり救急車で運ばれてそのまま手術になったと聞き、自分のことも心配になり、知り合いに相談すると一度脳ドックを受けた方が良いということで今回脳ドックを受けました。
 健康診断で時々血圧が高いと指摘されたことがあります。食事はあまり太らないようにとは思っていますが、特別なことはしていません。タバコは一日一箱半。ビールをほぼ毎日のみます。(48歳、男性)

隠れていた脳梗塞
 脳ドックでは頭部MRI検査が行われます。MRI検査はコンピューターを使って脳の輪切りを作る機械で、CTスキャンと違うところは強い磁石を使う所、5mm以下の病変も見つけることです。この男性の場合、小脳に1ヶ所古いもの、右の大脳に2ヶ所古いもの、そして左の大脳に新しい小さいものと、全部で4ヶ所、脳梗塞が見つかりました。

小さい脳梗塞の予後
 小さい脳梗塞が将来どうなるかについて日常生活を何も変えず特に治療を行わない場合、5年後に大きい発作(半身麻痺などで他人に日常生活を助けてもらう)を起こす可能性は約4割と言われています。また、日本人に多い多発性脳梗塞型の痴呆があります。何も知らないうちに脳梗塞が多数できて、定年になったら頭もボケちゃっていたになったら大変です。

脳梗塞の進行を防ぐ
 脳梗塞は脳血管の動脈硬化(血管の老化現象)です。この進行を遅らせるには、この人のその後小さい脳梗塞の予後隠れていた脳梗塞2、3日でなおった手のしびれ家族を交えて日常生活を変える必要があります。先ず、適度な運動を行い無理をしない。汗をかく時は十分に水分を取る。煙草はゼロでアルコールは適度(ビール一日一本程度)。不飽和脂肪酸を取る。それには、紅花オイルやオリーブオイルに変える。魚(特にイワシなど)を中心とした食事にするなどが日常生活の工夫です。医学的には高血圧(脳の場合は、下の血圧が高い方が重要で90以上の時は下げる)、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症などがある場合は治療をする。またアスピリンなどの薬を飲む。中には手術が必要な人もいます。こうすることで、5年間の発作率が2割位に下がります。

この人のその後
 この人には家族が大切か、仕事が大切かと説明しました。体に無理をして働いて突然倒れたら、家族にも、もちろん会社にも役に立たないと説明しました。暫くは無理をしないでとも言いました。そして、外来に奥さんと来てもらい日常生活や食事指導の必要性を説明しました。そして、内科的な検査や治療が必要であることを説明しました。1年位通院し脳梗塞が進行していないことを確認して、「あなたはまだ出世もあるし、どうぞバリバリ働いたら」と言いました。
 この様な人が何人も脳ドックで見つかります。暫くは無理な仕事を抑えてもらいますが、殆どの人が1年もすると何をすべきか自覚していて、元どおりの仕事がどんどん可能になります。一方で、急患で40才台の人が突然倒れて運ばれてきます。病院に呼び出された家族が、「朝は元気に出ていったのにどうしてですか。」と言われますが、返事の仕様がありません。これは残念です。

一病息災
 無病息災だと思って無理をして突然倒れないで下さい。何か気になる時は検査を受け、小さい病気が見つかった時は良かったと思って、日常生活に気を付けて下さい。長期の仕事が可能となり、家族にも社会にも役立つことになります。


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