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病院広報誌

緑のひろば

2011年8月号

たばこは百害あって一利なし

循環器内科部長 野崎 彰


はじめに:俳優の舘ひろしさんが禁煙に成功したことが話題になり、たばこの害について認識を新たにされた方も多いと思われます。私は非喫煙者だから関係ないと言われる方もいらっしゃることと思われますが、自分の意思に反してたばこの煙を吸い込んでしまう「受動喫煙」という問題も存在します。これから、たばこの害と受動喫煙について改めて考えてみたいと思います。

日本人の喫煙率:日本の成人男性の喫煙率は1960年代には約80%でしたが、その後、減り続け2005年には40%以下になりました。
しかし、他の先進国の喫煙率(米国男性は20数%)に比べるとまだまだ高い数値です。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」では、2008年の喫煙率は男性が36.8%、女性が9.1%で全体では21.8%になっています。


たばことがん:たばこが肺がんや喉頭がんの危険因子であることはよく知られています。この他にも消化器系(口腔・咽頭がん、食道がん、胃がんなど)や泌尿器系(膀胱がんなど)、生殖器系(子宮頚がん)などの全身の様々のがんの危険因子になります。


たばこと循環器疾患:たばこは虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳卒中、大動脈瘤、末梢血管病(閉塞性動脈硬化症、バージャー病)などの危険因子です。たとえば、1日20本の喫煙により虚血性心疾患の危険度は1.7〜2.4倍になります。心疾患全体の危険度も、1日20本以内の喫煙で4.2倍、20本超で7.4倍と本数に比例して増加します。脳卒中でも喫煙が総脳卒中発症(男性1.27倍,女性1.98倍)、クモ膜下出血(男性3.6倍,女性2.7倍)の危険因子になっています。

たばこと呼吸器疾患:たばこが肺がんの危険因子であることは先に述べましたが、種々の疫学調査では喫煙量と肺がん死亡率との間には因果関係があることが分かっています。1日の喫煙本数が多いほど、喫煙期間が長いほど肺がんによる死亡リスクが高くなります。
また、喫煙開始年齢が低いほど肺がんのリスクが大きくなります。この他に、慢性閉塞性肺疾患(肺気腫・慢性気管支炎など)の発症原因の80〜90%が喫煙と言われており、「たばこ病」として注目されています。また、喫煙が喘息発作の誘因になることや自然気胸の発症者には喫煙者が多いことなどが知られています。


受動喫煙:たばこには本人が吸う「主流煙」とそれ以外の「副流煙」があります。驚くことに、「副流煙」の方が「主流煙」よりも多くの有害物質を含んでいるのです。受動喫煙の被害の一例ですが、喫煙者の夫からの受動喫煙により非喫煙の妻が肺がんにかかるリスクが約30%高まるという報告があります。また、親の喫煙による子供への影響として、自然流産、乳幼児突然死、低体重出生、肺炎・気管支炎・気管支喘息、知能低下・多動症などのリスクが増加することが知られています。


禁煙宣言:私が所属している日本循環器学会のみならず、日本呼吸器学会、日本癌学会など多数の学会が「禁煙宣言」を出しています。日本医師会、日本看護協会、日本薬剤師会、日本臨床衛生検査技師会などの医療に関連する団体も禁煙宣言を出しています。中でも、日本公衆衛生学会の「たばこのない社会の実現に向けた行動宣言」は単なる禁煙だけではなく「たばこのない社会」を目指すという一歩踏み込んだ宣言であり、魅かれるところがあります。各学会や団体の「禁煙宣言」は日本循環器学会の2005年版の禁煙ガイドラインでご覧になることができます。

最後に:当院は現在のところ敷地内禁煙ではないので、禁煙外来の開設ができません。来年度から敷地内禁煙になり、禁煙外来が開設される予定です。現在喫煙中の方は禁煙を行い健康な生活習慣を身につけて下さい。非喫煙者の方も、身近にたばこを吸われる方がいらっしゃいましたら、ぜひ禁煙を勧めて下さい。

以下を参考にしました。
禁煙ガイドライン(日本循環器学会):医師向けです。
http://www.j-circ.or.jp/guideline/index.htm
すすめよう禁煙(日本医師会):一般向けです。
http://dl.med.or.jp/dl-med/nosmoke/susumeyou.pdf


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