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病院広報誌

緑のひろば

2010年11月号

甲状腺の病気

代謝内分泌内科 竹下 雅子 


今回は甲状腺の病気と鑑別が必要となるその他の病気を紹介させて頂き、診断には様々な診療科との連携が大切であることをお話しします。

甲状腺の病気には病因から大きく「橋本病、バセドウ病の自己免疫性」と「甲状腺癌などの腫瘍性や腺腫様甲状腺腫などの過形成によるもの」、「亜急性甲状腺炎などの炎症性」、「ペンドレッド症候群などの先天性」に分けられます。もうひとつの分類としましては甲状腺機能異常を来しうる疾患とそうでない疾患に分けられます。

特に前者の頻度につきましては、成人のうち甲状腺自己抗体(サイログロブリン抗体や甲状腺ペルオキシダーゼ抗体)を持つ方は男性で14.4%、女性で24.7%にもなるといわれ、潜在的なものも含めると21.7%の方が甲状腺機能異常を来しうる(ほとんどが橋本病)といわれております。

具体的にはバセドウ病や橋本病といった甲状腺の自己免疫疾患が甲状腺機能異常を来すことはよく知られておりますが、腫瘍性病変や腺腫様甲状腺腫でも甲状腺機能亢進症を来すことがあります。また甲状腺機能異常では典型的な自覚症状を認めることがよく知られており、これらは診断の助けとなります。具体的には機能亢進症では動悸、体重減少、発汗過多、眼球突出などがあり、機能低下症では易疲労感、眼瞼浮腫、寒がり、動作緩慢、体重増加などが挙げられます。しかしながら甲状腺機能異常は様々な臨床症状を惹き起こすため、他の病気と常に鑑別する必要があり、診断に苦慮することが多々あります。

例えば、機能亢進症では血糖(特に食後血糖)が上昇し糖尿病との鑑別が必要となることがありますし、骨量が減少すれば骨粗鬆症との鑑別も必要となります。 また心房細動などの不整脈が出現し心疾患と間違えられることもあり、注意が必要となります。

一方機能低下症ではうつ病や認知機能低下、悪玉(LDL)コレステロールの上昇を来し、脂質異常症との鑑別が必要となります。肝機能異常から慢性肝炎と間違えられることもありますし、不妊症の原因となっていることもあります。甲状腺腫が明らかな場合は診断が容易にできますが、甲状腺腫が目立たない患者さんや特にご高齢の方では特徴的な自覚症状を欠き、診断に難渋することがあります。

米国では何年かに一度、TSH(甲状腺刺激ホルモン)値のスクリーニング検査をされておりますが、我が国では健診でTSH値のスクリーニング検査は有りませんので、別の方法でできる限り診断できるよう努める必要があります。しかしながら健診の触診により甲状腺全体が腫れている「びまん性甲状腺腫」を指摘された方、脂質異常症などを指摘された方を積極的に鑑別をしても、前者で3分の1、後者でも3分の1位しか機能異常を指摘できておらず、残りの3分の1は見逃されているという報告さえあります。

このため、最初から糖尿病や脂質異常症などで当科を受診された方だけでなく、様々な症状を契機に他科を受診された際に、甲状腺の病気を疑われ当科に紹介された方から甲状腺の病気が見つかる例が少なくないことを知って頂ければ幸いです(表1)。このため当科では様々な科との連携をとりながら早期発見に努めております。

(表1)

  • 循環器科
    浮腫、不整脈、心不全、アミオダロン使用時
  • 消化器科
    体重減少・増加、便秘・下痢、肝機能障害・黄疸、 インターフェロン治療
  • 神経内科、精神科
    脱力、四肢麻痺、いらいらなどの精神症状、うつ、 認知症
  • 眼科
    眼球突出、眼瞼浮腫
  • 耳鼻科
    頚部腫脹、頚部痛
  • 放射線科 画像上の甲状腺腫脹や腫瘤性病変



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