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病気のはなし

内視鏡治療
〜内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)について〜

光学医療診療科部長 渡辺 一宏
(緑のひろば 2013年11月号掲載)


はじめに、光学医療診療科とは内視鏡科のことです。さて今回は私が当院に2005年に赴任してきてから行っている治療の1つの早期胃癌・早期大腸癌の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)についての話をしたいと思います。

昔、35年以上前は胃癌・大腸癌の治療は、すべて外科的手術でした。しかし現在では早期癌であれば内視鏡的切除で完治できるようになりました。当院では2006年から早期胃癌に対して、ひとかたまりで(一括)切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を導入しました。この内視鏡的治療は、原則的に早期の癌(ほぼ粘膜内にとどまっていると診断された浅い癌)だけになります。そのため癌が根を張ったもの(進行癌)や内視鏡切除しても根が残っていた場合(遺残)は外科的手術が必要になります。つまり何でも内視鏡で取れるわけではないのです。このために早期発見・早期治療が重要なのです。

そのESDとは粘膜下層にヒアルロン酸などを注入し、癌を持ち上げてから高周波ナイフで少しずつはがし一括で癌を残さずに取りさる高度な技術を必要とする治療です。理論上では大きさが何cmでも切除できるという画期的なもので、治療時間も高周波ナイフや内視鏡技術の向上などにより、ほぼ1時間以内で治療できるようになりました。

それでは、なぜ一括切除にしなければならないのでしょうか?それは2002年に国立がんセンター中央病院から、癌をひとかたまり(一括)で取る場合と分割で取る場合の、遺残再発が一括で0%、分割では5%との報告によります。このことからも、早期癌は再発しないように一括で取るようにしています。また当院では早期大腸癌に対しても2007年からこのESD治療を導入し,適応症例を厳選して過小/過剰治療にならないように心がけて治療して7年間経過しました。このため当内視鏡室は日本消化器内視鏡学会の選定を受け、大腸のESD全国多施設検討(全国68施設)に参加し、その成果で昨年(2012年4月)から、全国の早期大腸癌の患者さんが自費ではなく保険内でこの治療を受けられるなりました。

ここまではESDは魔法のような治療でいいことばかりのようにも思われますが、治療後、はがしとった部分は、癌とともに正常な粘膜層もなくなっているため人工的な深い潰瘍ができてしまいます。このため治ってくるまでの初期(手術日から1週間以内)には大出血・穿孔(穴が開く)など偶発症の可能性が数%あります。いつも完璧を目指して治療は行っていますが、例えば、どんな薬を飲んでもある一定の低い確率で副作用がでるのと同じように、そのような偶発症もあり得るのです。以上の治療に際しては治療医師から事前に説明を聞くことが重要です。納得してから治療を受ければよいと思います。

また「いい病院」(朝日新聞社)や「病院の実力」(読売新聞社)などに掲載されている内視鏡センターのあるような大病院で治療を受けるのも1つの手です。ちなみに当院は中規模病院ですが、内視鏡治療部門は最新2013年度版で前述した2誌の治療数ランキングで胃癌・大腸癌ともに並み居る大病院とともに掲載されており健闘しています。当院での実際の治療の詳細をご覧になりたい方は関東中央病院ホームページ消化器内科にある「渡邉一宏」のところの3つの緑の枠をクリックしてみてください。

この早期胃癌の内視鏡治療はすでに当院で8年目に突入しました。努力し続けることで10〜20年後の世田谷地区の胃癌・大腸癌の死亡率を減少させていくことができると確信しております。

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