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病気のはなし

摂食障害とは?

精神科 中 康
(緑のひろば 2013年8月号掲載)


思春期と摂食障害
思春期には、第二次性徴の発現によって大人の体に成熟してきますが、それに伴って自分が男性として/女性として魅力的かどうかが非常に気になり出す時期です。自分のスタイルにこだわりダイエットを始める人は珍しくありませんが、それに歯止めがかからなくなり、極端なやせに至る人もでてきます。

神経性無食欲症と神経性大食症
「神経性無食欲症」では、やせ願望が強くなり、ダイエットをしたり過剰に運動したりする結果、極端なやせや無月経に至ります。そして様々な身体面の不調をきたし、最も深刻な場合には血液中のカリウムが不足し、不整脈や心停止に至ることがあります。十分に治療をしておかないと、大人になってから社会生活や家庭生活、子育てなどが困難になる危険があります。また死亡率も10年後に約10%と命を落とす危険も少なくありません。
「神経性大食症」では、過食や嘔吐を繰り返し、人によっては下剤等を乱用する場合もありますが、極端に体重が少なくなることはありません。
摂食障害は、性別では女の子に多く見られます。上記のいずれの場合も、頭の中は食べること/食べないことで一杯になり、本当の悩みごとは心の中から消し飛んでしまっています。

中心は人間関係をめぐる心の悩み
表面的には食の問題や体の問題であるかのように見えますが、いずれの場合も、中心にあるのは心の悩みなのです。
やせるきっかけとして、例えばほっそりとスタイルのいい人気者の女の子と自分を比較して、劣等感や自信喪失を味わった結果やせに至るようなことがよくみられます。また元々親の期待に合わせて頑張る良い子が多く、完璧主義で、人よりも優れていたい気持ちが人一倍強いことが少なくありません。そのような子が、現実の友だちとの関係の中で、自尊心を守りきれないような困難に陥る中、体重を減らすことで人よりも優位に立つことで心のバランスを取ろうとしているわけです。
また、過食についても、友達や親との間で感じる絶望な耐え難い気持ちをはらすために、気分をリセットする手段として行われることがほとんどです。

母−娘の間に展開する激しいバトル
子どもが摂食障害に陥ると、母親は子どものやせや低体重に不安になって心理的に巻き込まれ、何とか食べさせようと必死になります。一方子どもの側は、食べているふりをしながら隠れて弁当を捨てたり嘔吐をしたりして、拒食を続けます。そして母−娘の間で食をめぐる壮絶なバトルが展開することになります。

摂食障害をどのように治していくか
治療としては、やせている場合、栄養を十分補給することも必要ですが、同時に心の問題に気づいて解決していくことが中心的な意味を持ちます。体重を増やす治療を行っても、心の問題を解決しないと、再発を繰り返してしまいます。なお外来通院の形で治療できる場合もありますが、体重減少が著しい場合には、入院して、点滴や経管栄養を行うことが必要な場合もあります。
思春期の本人とは、心の中にある悩みを「心理療法」の中で相談していきます。その際にテーマとなることが多いのは、相手に合わせるよりも自分の気持ちを大事にして、自分の気持ちを友人や親に対して表現したり主張したりしながら、相手と相互交流できるようになることです。
一方、親に対しては、「親ガイダンス」の中で思春期の子どもへの対応に仕方について助言を行っていきます。親の対応としては、親の力で食べさせようとしたりしても悪循環になるばかりで効果はないため、子どもの食の問題に関わらず、食べる/食べないは本人に任せるようにすることが肝心です。併せて、生活全体にわたり、親が子どもをしつけようとしたりコントロールしたりしようとするのではなく、子どもの自律性や自己決定を尊重していく姿勢が、治療をプラスの方向に動かします。

10代のうちに回復をめざす
摂食障害は、以上のような相談を続けることによって、時間はかかるものの、ゆっくりと回復に向かいますが、一部は長引く場合や再発を繰り返す場合もあります。なるべく早めに相談し、10代のうちに治療を始めていくことが大切です。
関東中央病院精神科では、10代の方の摂食障害について、本人・親の相談にのっていますので、是非ご活用ください。


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