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病院広報誌

緑のひろば

2013年3月号

乳房再建のはなし

形成外科部長
丹生淳史

 近年、乳癌の発症率が年々増加しています。アメリカでは8人に1人、日本でも16人に1人の割合で発症するとされています。女性の癌では罹患率が一番高い癌です。30歳代から増加しはじめ50歳前後にピークを迎えます。
 治療は放射線療法や化学療法も行われますが、原則は外科治療です。外科手術も最近は、温存手術と乳房切除術の予後にあまり差がないことが報告されてきており、温存手術が増えてきました。しかしながら現在でもなお乳房切除術や広範囲切除を選択せざるを得ない場合もまだまだ少なくありません。そのような場合の不安感や喪失感など精神的ダメージは女性にとって大変大きいものと思います。
 そのような精神的ダメージを少しでも和らげるために、形成外科では従来より乳房再建という治療を行っています。

 乳房再建は1回で終わるわけではありません。まずマウンドと呼ばれる盛り上がり(土台)を作り、その後に乳頭乳輪の再建を行います。マウンドの再建が一番手間がかかりますが、その手術時期ならびに手術方法の組み合わせによりいくつかの方法があります。どの方法を選択するかは医師とよく相談する必要があります。
 以前は乳癌の手術が終わり、しばらくして落ち着いてから乳房再建をすることが多かったのですが、最近は乳癌手術と同時に再建治療を開始することが多くなってきました(同時再建)。そうすることで手術の負担が1回減るだけでなく、皮膚皮下組織の癒着や拘縮(ひきつれ)がない状態で再建を始められるメリットがあります。しかしながら、癌の宣告を受けて気持ちの余裕がなく、再建のことまで気が回らない方も決して少なくないことと思います。そのような場合は癌の手術が終わり気持ちに少し余裕ができてからゆっくりと再建を考えて頂ければ良いと思います。再建に決して手遅れということはありません。

 実際のマウンドの再建方法をお話しさせ頂きます。大きく分けると、ご自分の脂肪や筋肉で再建する方法(筋皮弁法)とシリコンインプラントと呼ばれる人工物で再建する方法(インプラント法)があります。筋皮弁法はご自身の背中や腹部の皮膚・皮下脂肪・筋肉を移動し形を整えて乳房を再建する方法です。この手術の最大の欠点は、違う場所に大きな傷を作ってしまうことに加え、元々の乳癌の手術よりも大きな手術をしなくてはならないことです。入院も1週間以上必要です。一方インプラント法は美容の豊胸術で使用されているシリコンインプラントを使用する方法で、身体への負担がはるかに軽く、入院期間も短くて済みます。当院で再建を希望される方の9割以上はこちらを選択されています。ただしこの方法の欠点は、健康保険が適応されず、全額自己負担となることです。施設および入院期間にもよりますが、60〜100万円位かかります。しかしながらとても喜ばしいことに、このインプラント法による手術が今後保険適応になることが確実となりました。現在、保険適応に向けて関係学会が具体的な制度作りに動いている最中です。早ければ本年中に保険適応となる可能性がでてきました。非常に良い知らせだと思います。  ただしインプラント法には費用以外の欠点もいくつかありますので、医師と十分に相談して決めて頂く必要があります。再建をご希望の方は是非一度形成外科に相談におこしください。


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