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病院広報誌

緑のひろば

2010年9月号

新しい治療法 腹部大動脈瘤について

心臓血管外科 川﨑 暁生 


お腹の中を通っている一番太い動脈を腹部大動脈といいますが、その血管がこぶ状に膨れた状態を腹部大動脈瘤といいます。4対1の割合で男性に多く、原因は動脈硬化症や高血圧症と考えられています。

このこぶが段々大きくなると、いずれ破れて命にかかわることも少なくありません。通常2cm程度の血管が倍以上の大きさになると腹部大動脈瘤と診断され、直径が5〜6cmを超える大きさになると破裂の危険性が高いと言われています。

他の病気で検査した時に偶然見つかったり、臍周囲に拍動性腫瘤を自覚することで見つかる事がありますが、破裂するまでは無症状の事が多く放置されているのが現状です。動脈瘤が破裂すると突然の腹痛や腰背部痛が出現します。外からでは分かりませんが、おなかの中で大出血を起こしているわけですから、すぐ救急車を呼んでも間に合わないケースや、病院に運び込まれても緊急手術となり、かなりのリスクが伴います。

通常の健康診断では残念ながら指摘されることはありません。腹部エコー検査でも見つかる事がありますが、正確な大きさや瘤の範囲はCT検査で診断します。

大動脈瘤と診断されたら、瘤が小さければ、血圧を低く維持して定期的なCT検査で経過観察です。リスクを避ける為には、破れる前に手術を受けなければなりません。経過観察中に1年間で0.5cm以上拡大したり、見つかった時点で5cmを超えているケース、また、小さくても一方だけ膨らんだタイプ(嚢状瘤)は破裂する危険性が高い為、外科的治療を選択します。

従来は、お腹を大きく切り、血液の流れを一時的に止めて、血管がこぶになっている部分を人工血管に置き換える手術(人工血管置換術)を行っていました。手術は確立されており安全性も向上していますが、開腹手術の為、高齢者や持病がある患者さんではリスクが高く、大きな動脈瘤が見つかっても手術が出来ないということもありました。

これに対して、両足の付け根を数p切開して、この部分の血管から人工血管を挿入し、瘤の位置で拡げ固定する手術(ステントグラフト手術)が保険診療で認められました(現時点では合併症の為、開腹手術のリスクが高い人が適応となっています)。 ステントと呼ばれる金属の骨格が付いた人工血管を小さく折りたたんだ状態(ステントグラフト)で、血管の中を通してお腹まで進めて、レントゲン画像で確認しながら拡げます。手術中も、瘤破裂の危険性があるので、いつでも開腹手術に移行できる状態で行いますので、通常全身麻酔で行います。全身麻酔をかけられないような合併症をお持ちの患者さんでも下半身麻酔で行うことも可能ですので、今まで手術を断念していた患者様にも、治療の可能性が広がりました。傷が小さく済みますので、術後の痛みも少なく、入院期間も人工血管置換術に比べ短くて済みます。

すべての施設で行えるわけではありませんが、当院で手術を受ける事が出来るようになりました。この文章をお読みの皆様も横になってお腹を触ってみて下さい。やせている人では正常でも拍動を触れることがありますが、ドクドクと触れるものがあれば、大動脈瘤かもしれません。まずは、心臓血管外科を受診して、侵襲の少ない超音波検査を受けてみましょう。



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