すでにお話しましたように、肝細胞癌患者さんの多くがC型肝炎やB型肝炎をベースにした肝硬変を合併しています。従って、肝細胞癌患者さんの治療の際には、癌そのものだけでなく、いかに肝機能を温存するかに注意を払わなければなりません。

 一般に肝硬変患者さんの肝機能は良好な順にChild A, Child B, Child Cというように大きく3つに分類され、肝細胞癌治療後の予後(生存期間)は肝機能によって大きく左右されます。

 ラジオ波が導入される前に東大病院で治療(エタノール注入療法・マイクロウェーブ凝固療法)を受けた227名の患者さんに関してその後の肝機能の推移をまとめたところ、AからB へ年率7%、BからCへ年率14%の割り合いで起こりました。そして一旦肝機能の低下が起こり始めると短期間に肝不全に陥りしにいたることが明らかになりました(文献2、3)。


これらのデータを踏まえて、当院ではなるべく
肝臓に優しい治療を心がけています。具体的には治療前にCTを用いて肝臓の大きさを計算し、治療可能の範囲を決めるなどの工夫を行っています。
また、肝癌治療後の患者さんに対するインターフェロン治療も積極的に行い、肝機能の改善を図ることで好成績をあげています。