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病気のはなし

糖質制限食について

代謝内分泌内科 楠 和久
(緑のひろば 2015年10月号掲載)


 糖質とは正確にいえば、炭水化物から野菜などに含まれる食物繊維を除いたものですが、具体的にはご飯、パン、麺類に主に含まれる“でんぷん質”のことです。最近、この糖質を制限する食事療法、いわゆる糖質制限食がブームとなっています。

 “当社の減量プログラムで芸能人が何キロやせて見違えるほど筋肉質な体になりました”というような某高級トレーニングジムのCMをご覧になった方も多いかと思いますが、まさにこの会社が会員に推進している食事が糖質制限食であります。どのような減量プログラムを行っているかといいますと、基本的にトレーナーとマンツーマンで2か月間と期間を決めて食事指導をします。日々の食事において主食は極力取らず、高タンパクのおかずと野菜だけを食べてもらうそうです。そして、日々の食事内容を携帯電話の写真に撮ってもらい、それを専属のトレーナーにメールで送付し、その内容に対して賞賛や励まし、修正点などのコメントが来るということです。空腹時はチーズやナッツ類などの糖質を含まないおやつを積極的にとってもらい、糖質制限を徹底しています。

 特にこれまで炭水化物摂取が多かった方の中には、短期の血糖改善効果、体重減少効果がみられる人もいるようですが、果たしてこれを長期で続けることが安全なのかというのは議論が必要です。私自身が感じている問題点としては、
@そもそも継続が困難であること
A穀類を取らずおかずだけでカロリーを取るため食費が相当かかること 
Bアルコールはいくら飲んでもよいという指導がなされることが多いため、かえって健康を害する可能性があること
C糖質を制限すると相対的に脂質が増えるため、将来的な動脈硬化性疾患の増加が懸念されること、があります。

 最近発表されたある臨床試験においても肥満した非糖尿病者が低炭水化物食40g/日の厳しい低炭水化物食を指示されていましたが、実際に1年経過してみると実際の炭水化物摂取量は127g/日であり、低糖質食を続けることが困難であることを示していると思われます。

 現時点では糖質制限食を長期に続けることの健康に与える悪い影響を考え、もしも患者が強く希望する場合は3か月程度の短期間に留め、その後の体重のリバウンドに注意を払うことが重要であると考えられます。

 私自身の考えは糖質制限食の考えと大きく異なっており、むしろ米飯の適正な摂取が糖尿病の食事療法に最も重要と考えております。私の外来経験からは、完全に自炊ではなくても毎日ご飯を炊いている人は、食事が大幅に乱れることは少ないと思います。パンや麺類も炭水化物ではありますが、パンはパンのみで食べることは困難でバター・ジャムなどをつけなければ食べることは難しいですし、コンビニでの菓子パンのカロリーや脂質の量を見てみると分かると思いますが、とても日々の食生活の主食にできるものではありません。麺類は常に食べ過ぎのリスクがあり、栄養も偏りがちです。ご飯であればご飯だけで食べることができます。私は糖尿病患者さんには、可能なら1食当たりのご飯の量を計量してくださいとお願いしています。適正なご飯の量は指示カロリーの数字の1/10、つまり1600kcalを指示されている方は1食あたり160g程度が適正量としてよいと考えています。

 普段お仕事で忙しく、なかなか自炊が難しいという方はまずは炊飯器を買ってきて、自宅で炊飯をすることから始めてはいかがでしょうか。


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