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病気のはなし

前立腺癌の放射線治療について

放射線科 服部英行
(緑のひろば 2010年12月号掲載)


前立腺は男性だけに存在する臓器であり、膀胱の尾側(下方)、直腸の腹側(前方)に接するように存在する比較的小さな臓器です。前立腺癌の治療法としては、@手術、A放射線治療、Bホルモン療法、の3つが主であり、これに、抗癌剤治療などが行われる場合があります。また、病理学的な悪性度が低く、高齢者の方などでは、経過観察されることもあります。前立腺癌の根治療法(完全に治す治療)に成り得る治療法は、上記の中では、@Aの手術と放射線治療です。ちなみに、前立腺(と精嚢)に限局した癌の場合には、ほとんどの患者様が@かAの治療を行うことになります。Bのホルモン療法は良く効く治療法ですが、数年で耐性を獲得し、効かなくなってくる場合がほとんどです。しかし、ホルモン療法は数種類あり、長期間において前立腺癌をおとなしくさせることが可能である素晴らしい治療法であることも確かです。

手術と放射線治療の治療成績は、放射線治療技術の進歩により、現在はそれほど変わらないと言われています。どちらの治療法を選択するかは、主に、副作用の違いによるところが大きいと思われます。手術の問題となりうる副作用は、尿漏れ、切迫尿(尿意を感じたら、すぐ漏れそうになる状態)、インポテンスなどであり、放射線治療の副作用で問題となりうるのは、放射線治療後2年ほどで発症する直腸出血、膀胱出血、尿道狭窄、直腸狭窄などです。ちなみに、尿漏れ、切迫尿は放射線治療でも起こり得ますが、手術療法と比較すると発症率は低いです。また、直腸出血の発症率は10%以内であり(当院の新しい治療装置では5%以下)、その多くが、経過観察もしくは内科的治療で済む程度です。また、出血が多い場合はレーザーで止血することもあります。しかし、稀に輸血が必要となる場合があり、ごく稀には直腸穿孔(直腸に穴が開く)を起こし、手術が必要となる場合もあります。しかし、直腸穿孔は、前立腺癌を20年間治療してきた当院でも、以前の治療装置で治療した1人だけであり、ほとんど心配する必要は無いと思われます。膀胱出血は、当院では問題となったような患者様は皆無であり、尿道狭窄は、ブジーというもので数回拡げる処置を行えば、改善する可能性が高いです。直腸狭窄も、新しい治療装置になってからは、問題となるような患者様は出てきていません。

前立腺癌に対する放射線治療の方法は、先ず、CTで前立腺とその周囲を2.5mm間隔で撮影します。その撮影された画像を治療計画用のコンピューターで立体画像にし、照射(放射線を出すこと)方法と線量分布(放射線の量の分布図)を作成し、前立腺全体が照射され、かつ、直腸や膀胱の照射される容積を最小限にするような治療法を決定します。しかし、前述のように、膀胱と直腸は前立腺と接した位置にありますので、全てを外すことは不可能です。そのため、ある確率で、出血(特に直腸出血)が起こりえるのです。当院での照射回数は、1回1分程度の照射を毎日(原則的には平日のみ)、計37回ほど行います。つまり、7〜8週の治療期間が必要となります。しかし、外来通院治療が可能であり、放射線治療室に入ってから出るまで10分弱ですので、散歩ついでに治療を行うこともできます。また、茨城県から通って治療していた人や、片道2時間近くかかる職場で仕事をしながら治療を行っていた人達もいます。

放射線治療には、初期の前立腺癌に対して小線源治療という1泊入院で終了する治療法もありますので、泌尿器科か放射線科に来院されました。

放射線治療装置:リニアック



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